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「ま~た怒ってんの大輝。省吾はワザとじゃないって言ってるじゃん。大体静流が喜んでるんだからいいじゃない」
いやあずさ、それは違う。
俺だって子供だけど、女の子に指輪をあげる意味くらい知ってる。
なんか俺、生まれて初めての女の子へのプレゼントでエラいしくじった感じ。凄いルール違反した気分だ。
こんなことなら、包んでもらう時ちゃんと見てれば良かった。品物だけ指定してお金払って。俺、恥ずかしくてカウンターから離れちゃったから。
「大輝」
「……」
大輝、返事もしてくれないや。参ったなぁ…
「ごめん、俺帰るよ」
居たたまれず立ち上がった。その右足を大輝がいきなり両手で掴む。当然、前のめりにビタンと倒れこむ俺。顔から落ちた、痛い…
「帰るな~!」
地の底から沸くように響く大輝の声。でも、お前怒ってるし。
「帰ったら絶交する~!!」
そんな事言ったってこの状況にちょっと耐えられそうにも無い。とりあえず俺は帰る。
俺は何とか起き上がって、右足に大輝を引きずったまま部屋を出ようとした。
「省吾、大ちゃん…」
でも一番堪えたのは、そんな俺らのやり取りを心配そうに見ている静流を見た時だ。
やばい、静流、泣く…?
「あ~ぁ、大輝と省吾が静流を泣~かしたぁ~、と」
へっ!?俺もっ!?
この騒ぎに一切関せず、黙々とジュースを人数分の紙コップに注いでいたタキが、俺の方を見ないで言う。
「ほんとに男二人ががりでひでぇなぁ…なぁ、あずさ?」
「まったくよ」
あずさが腕組みをして俺と大輝を交互に見る。
「静流を泣かすヤツを片っ端から黙らせてきた張本人がねぇ…省吾なんて、せっかくの静流のお祝いに参加しないで帰るっていうし。これじゃ静流が泣いたって仕方ないわね」
その言葉に静流を見ると、本当に大きな瞳から涙がこぼれ落ちそうになっていた。「泣きそう」じゃなくて「もう泣いてる」だ、ヤバい…!!
「ごめん静流!!」
大輝が静流の前にすっ飛んでいく。
「俺、省吾がうらやましくて…!!俺、とてもそんな指輪とかイヤリングとか思いつかないし。悔しくてつい…ごめん静流、省吾!!」
大輝が、心底困った顔で俺に頭を下げる。
本当に大輝、静流が大好きなんだな。かなりおろおろしちまってるし…俺もだけど。
でも、俺も本当に指輪とか思いついた訳じゃないんだよ。これは本当に不可抗力?だっけ、それだ。
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