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「父ちゃん、これ父ちゃんの部屋に入れておいて。俺の部屋置くとこないから」
金曜日の夜、俺は部屋の掃除を始めた。
明日、みんなが俺の家に来る。別に格好つけるつもりなんかないけど、せめてみんなで座れる場所くらい作っておかないと。
…いや、本当は静流にだらしないとこ見せたくないからなんだけど。
「なんだいきなり掃除なんか始めて、誰か来るのか?」
「うん、友達」
「友達…」
親父、びっくりしてる。
そうだよな。
俺、友達を家に連れて来た事なかったもんな。
小学校の時は、友達いなかったし。
「静流ちゃんかー!?」
「ちげーよ!…静流も来るけど」
あの日以来、親父と顔を合わせるたび親父は繰り返す。
静流が可愛い可愛いって。
当たり前のことを何度も言うな。
「何人くらいだ?」
「ん〜6人」
「へぇ」
しゃがんで箱を片付けている俺の頭に、親父がそのでかい手を置いて髪をクシャっとする。
「…何だよ」
親父、笑ってる。なんだかすごく嬉しそうだ。
俺に友達がいないの、ずっと心配してたからな。
俺は結構平気だったんだけど。だって俺には親父がいたからね。
「がんばって片付けな」
親父は言って、また髪をクシャっとさせた。
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