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「ただいまぁ」
それでも省吾とまーちゃんが帰る頃には、みんなで顔を洗っていたりして。
省吾には何も気づかれずに済んだようだった。
「親父」
省吾ってば荷物を置きながらお父さんを睨んでる。
「変な話してないだろうな?俺のチビの頃の話とか」
「今でもチビじゃんお前、―おぉ、あれな!」
お父さん、手をぽんと叩いたりして。
「省吾なぁ俺がたまに仕事に連れて行くと寝台とか助手席で寝ちまうんだけど、寝てるのに手が俺の作業服しっかり握っててなぁ…いやぁ可愛かった!おかげで俺、トイレ行けなくてさ~!」
「親父ぃ!!!」
省吾の顔が真っ赤だ。
「無理やり離すと泣き出すんだもんな。いやー困った!あれはなー」
「やめろって!!!」
なんと省吾がお父さんに飛び掛った。顔真っ赤だし、怒ってるし、怒鳴っちゃってるっし…
見たことない省吾のオンパレードだ。
「本当にチビの時の話だろ!やめろって、みんなが誤解するっ!!」
省吾のパンチ、みんなお父さんに止められてる。でも、すごい音。ちょっとびっくり。
誰も止めないし。大ちゃんなんて絶対面白がってる。
「誤解されて困るのは静流ちゃんにかな~♪」
「うるせぇ親父!!」
でもその親子のコミュニケーションを見ながら、みんな本当に気持ちが暖かくなっていた。
省吾は本当にお父さんが好きなんだね。
多分唯一、省吾が本当の自分をぶつけられる人。
「省吾ってけんか強いんじゃないか?すげぇフットワークいいし、パンチ重そうだな」
まーちゃんが冷静に分析しちゃってるよ。
「うん、俺もそう思うよ。毎日こんな事やってたら鍛えられるわな」
タキちゃんも思わず目を見張っていた。
とりあえず、その日私たちはそれまで見た事のない省吾の姿をいろいろな意味でまとめて見た事になった。
省吾の家から帰る道すがら、私たちはまーちゃんにもさっき省吾のお父さんから聞いた話を伝えた。
主にタキちゃんが。足らない所を美咲ちゃんとあずちゃんが。
大ちゃんは何か言おうとすると、すぐ涙声になっちゃってだめだった。
「そう…か」
それを聞いて、まーちゃんがどう思ったのか。
まーちゃんは、どんどん先に立って歩いて行っちゃったからわからないけど。
でも、まーちゃんもちょっとだけ泣いてた気がするよ…
見えなかったけど、本当にそんな気がしたんだよ。
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