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「おす」
翌朝玄関を開けたら、いきなり大輝が立っていた。
「大輝?よく俺んちわかったな」
「昨日、あずさの家の前からソッコー引返してお前のあとをつけた」
何でわざわざそんな事を?
「省吾、とりあえずガッコいこう」
「うん」
ポケットから鍵を取り出し玄関を閉めた。
「省吾んちもう誰も居ないのか?かあちゃんは?」
「ん?俺んち親父だけだから」
別に隠しておく必要は無いし。大輝もそれ以上は聞かなかったけど。
「あのさ」
「なに?」
そういえばどうしてここに大輝がいるのか、まだ聞いていない。
「昨日は…ありがとぅ」
「え?」
昨日って…あの、あずさとのやりとりか?
大輝はわざわざその礼を言う為に、こんなに朝早く俺んちの前に立っていたのか?
「マジで助かった…俺、あずさは本当に苦手で。チビの頃から一緒だから、頭上がんなくて」
「……」
うん、その雰囲気はなんとなくわかった。とても逆らえないようだなって。
「とりあえずありがとな。ちゃんと言わなきゃと思ってさ」
「どういたしまして」
礼を言われた事よりも、わざわざ朝早くに俺のうちまで来てくれたその大輝のまっすぐな律儀さが、何だか妙に嬉しかった。
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