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「雅之、ひどくねぇ?昨日会ったばかりの省吾が呼び捨てで、俺が『大ちゃん』お前が『まーちゃん』だぜ」
楽しいはずの昼休みの時間、大輝はずっとグダグダとくだを巻いていた。机に突っ伏して何か見るも哀れな雰囲気だ。
「俺も『タキちゃん』だけど?」
名前が滝川 実のタキが、何かの図鑑を読みながら大輝に目もくれずにいう。そんなのはどうでもいいじゃないかと言わんばかりだ。
「悔しかったらお前も静流に呼び捨てにしてもらえば?多分、無理だと思うけど。静流は器用じゃないから、一度インプットしたデータはそのまんまだよ」
「だからだよ―!!」
静流に呼び捨てにされるって、そんなに大変な事だったんだ。知らなかった…
何か大輝に悪いことしたなぁ…
「気にすんなよ省吾、アレは特殊例だから。誰もそんな事深く気にしてないし」
アレである大輝を指差し、雅之が言ってくれるけど。確かに大輝以外は、だろうけど。
「大輝」
「ぁあ?」
明らかに不機嫌なヤツの声。
「今から訂正してこようか?『君』つけてくれって」
「うるさいっ!!」
大輝がいきなり立ち上がる。
「器用じゃないって言ってんだろ!静流にパニック起こさすな!!俺が勝手に怒ってるだけだから!!」
ぱこんっ!と、雅之の脳天平手が大輝の頭に炸裂した。
「まぁ、そういう話だから。気にするだけ損だからな」
「くくっ」と、タキも笑ってる。
図鑑を読んで笑ってるのか、それとも大輝が面白いのか…笑える図鑑がある訳ないか。
やれやれと俺は席を立った。午後は科学室に教室移動だ。特に早く行く用事も無いけど、もう行こうかな…
「省吾?どこにいくんだ?」
「え?科学室だけど…」
「まだいいじゃん、もう少しここで遊ぼうぜ。後で一緒に行こ」
大輝の何気ないその一言に戸惑う俺。雅之とタキも頷づいている。
『俺、ここにいていいのかな』
戸惑いが残ったまま、それでも俺は大輝たちの前に座った。
決して居心地が悪くないそこに……
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