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 帰る準備をし、窓を閉める。  今日も相変わらず、十七時半きっかりに帰ることが出来る。本音を言えば、この仕事が気に入っている理由の第一位はこちらかもしれない。    今日も一日良い仕事をした。罪を犯した理由を尋ね、その感想が“面白い”なのは、仮にも刑事としては如何なものかと、自分でも思う。しかし、彼らの人生は、非常に“面白い”のだ。  そして、毎日この時間になると「嘘つきは泥棒の始まり」は、やはり真実なのだと、つくづく思う。  嘘をついた人間は、泥棒になる。これはこの世界の変えられない事実。故意でも、不本意でも事故でも、例え優しさだとしても。嘘をついた時点で人間は、泥棒。この流れに逆らうことなど到底不可能なのだ。ならばその流れに上手く乗ろう。    終業の鐘が鳴った。さあ、帰ろう。  明日はどんな泥棒が来るのだろう。彼らはどんな嘘をついたんだろう。そして、五年前、「警視総監が黒い組織と繋がっている証拠の在処など知らない」と嘘をつかされた俺は、あとどれくらいの過程を経て、泥棒になるのだろう。  そんなことを思いながら、俺は快適な、俺の部屋の扉を閉めた。 この先はどうなるかわからない。 【俺の場合:  警視総監と黒い組織の繋がりを知る →証拠を手に入れる →警察幹部に命を狙われる →嘘をつく、「警視総監が黒い組織と繋がっている証拠の在処など知らない」と嘘をつく →一命は取り留めるも要注意人物とされる →常に監視の目がある部署に配属される →刑事課窃盗係取調べ班班長と名乗る様になる →毎日泥棒の話を聞く →自分が泥棒になる運命と悟る →証拠をいつ・どのように盗もうか考える →? →? →……→泥棒になる】
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