泥棒小噺

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 10月某日 午前9時7分  板住(いたずみ)邸 「アニキ、アニキ、大変だ!」  血相を変えたケンジが勝手口から飛び込んできた。 「バカ、大声出すなよ。それよりさっさと支度しろ、もう出るんだから」 「ダメだ、今出ちゃ!」  腕時計を鞄に詰めながら潜めた声で一喝したがバカがまだ騒ぐので、山積みにしたアクセサリーの箱をいくつかずつ纏めて、本人の代わりに鞄に入れてやる。 「なに言ってんだ。盗品抱えたまま居座る泥棒があるかよ」 「見られたんだよ!」  切り返しに、思わず手が止まった。
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