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「見られた?誰に」
「う、裏の家の…」
眼光鋭く振り向くと、バカデカかった声が絞られた。
「裏っつーと…あの青い屋根のか。確かコッチ向きにベランダがあったな」
「様子見に勝手口から出たらさ、2階のベランダにいたんだ。絶対怪しまれたよ…めちゃくちゃコッチ見てたもん、あの婆さん…」
「…あ?婆さん?」
眉間に皺を寄せて訊ねると、泣きそうな情けない面でムサ苦しい長髪を掻き乱していたケンジが、鼻をすすって答える。
「え…っ。そうだよ、婆さん」
「どんな」
「どんなって…〝園〟の爺さんぐらいの歳で、白髪で痩せっぽっちで…」
「見た目なんざどうでもいい」
ジッ・とスポーツバッグの口を閉めてそれを担ぎ、白手袋の左手で長髪の頭を叩く。
「確かめに行くぞ」
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