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だから、ここを志望します
「で、早く本題に入れよ。」
「いや、だから今話していたのが本題ですって。」
「お前がお馬鹿な行動をしたってことしか分かんねーよ!!俺が!聞きたいのは!なんでこの志望校にしたかってことだよ!」
放課後の進路面談。
一学年の生徒が片手で数えられるくらいの小さい高校で教師をしている俺はすました顔で座っているこいつに思わず声を荒げる。
この島出身の俺は小さいころからこいつを知っている。
小さいころから変わったやつだなぁと思っていたが、今日の今日までずっと思い続けているが、ここまでとは思わなかった。
ただ、変わったやつだが頭はいい。
さっきもすらすらと刑法を諳んじてみせた。
そんなこいつが志望する大学は東京の公立大学。
偏差値も問題ないだろうがその学科が船の設計を学べるという事で、理由に興味があった。
「まあまあ、落ち着いてよ。」
少しイラっとしたがここで感情をさらに荒げるのは得策ではないことは分かる。俺は、少し呼吸を整えてから口調を元に戻す。
「で、なんで船の設計をしたいんだ?」
「だから、僕は「泥棒」と呼ばれたいんですって。」
「いや、それはもういい。十分わかった。」
「だから「Drown boat」なんて「泥棒」と似た響きの言葉は必要ないんです。」
「…は?」
「「Drown boat」なんて言わせないために僕は決して沈まない船を設計するんです!」
意味を理解して立ち上がって突っ込みを入れるまであと10秒。
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