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1.霞がかる契
昔むかし、この出雲国には大国主命という神様がいました。この神様はお兄さん達にいじめられていて、何度も危険な目にあってきました。ある時、八上比売という美しい神様に会うため、お兄さん達と会いに向かいました。お兄さん達の荷物持ちとしてついて歩いていた時、因幡の国を通りました。そこで毛皮のはげた白兎がたいそう痛そうにしていました。荷物を持たないお兄さん達が先頭を歩いていたので、兎を先に見つけ、痛がっている兎を揶揄いました。海水で洗って乾かせば毛皮がまた生えると嘘を教えました。兎は言う通りにしました。すると、海水の塩分で体中がヒリヒリして更に痛くなりました。ちょうどその時、遅れてやってきた大国主が通りかかり、悶えている兎を助けました。
真水に浸かり海水を洗い流し、その後蒲の花に寝転ぶように言いました。
言う通りにすると、毛皮がまた生え始めました。
その後、遅れて到着した大国主の方を八上比売は求められたのでした。
これは出雲に伝わる神話である。
これを子供の頃に聞いて育つ。
私、有藤 翠も例外ではない。
私は出雲の山奥で育った。
私の住む山の池には昔から神様がいると言われている場所であった。
この出雲において、神様がいるというのはごく当たり前である。
全国的に10月は「神無月」と言われる月に当たるが、出雲では逆に「神在月」と言う。
これは、全国の神様が縁結びの会議を開くため出雲の出雲大社に集結するのだ。そのため、この月は一部の地方では音を立ててはいけないなど神様の会議の邪魔をしない為に神経を尖らせて生活する所もある。
神迎えの儀式から大忙しの宮司さん達。
お疲れ様です。
そんなこの出雲で育ったことを私は誇りに思っている。
しかし、田舎であることは変わらない。
だから若かった私は、都会に憧れた。
そして、大学進学を機に東京へでた。
そして、アラサーとなった今またこの地に足を踏み入れる。
なぜかというと、簡単に言えば振られたのだ。恋人に。
その理由というのが、二股かけておいて、「ごめん、もう好きじゃない。俺他に付き合ってる子いるから、別れて。」だ。
おい、待て。
「もう好きじゃない」は失礼だが人の好みは色々だから、百歩譲って許そう、だが最後の一言は要らなくないか?
同期入社でそこから付き合うようになって早5年。
27歳でそろそろ結婚を意識してもいいかなって時に振らなくても、二股かけてたなら帰る前に振ってくれ。
その方が、私も早く前に進めたのに。
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