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「涼平さんは?私と離婚……したいの?」
これは、私から涼平への最期の確認だ。
「亜紀には本当に感謝してる。でも……子供に恵まれなかったってことは、結局、縁がなかったと思うんだ……」
良かった。私は間違ってはいなかった。やはり、私という存在は、涼平の人生には必要なかったのだ。そして、私の人生にも、涼平は必要なかった。
「分かったわ……。ただ、うちの両親にも、うまく話したいし、円満に離婚したいの。だから暫くは、今のまま、私と暮らしてくれるかしら?」
私は、私の決断が間違っていないことに、感極まり、涙を湛えながら、涼平をじっと見つめた。
「すまない……亜紀は、本当に最後まで、良き妻だな……」
立ち上がると、涼平は、そっと私を抱きしめた。
涼平のワイシャツに滲んだ私の涙が、憎しみで増殖していく細胞のように、じわじわと確実に広がっていく。
「……最後まで、私たち、良き夫、良き妻として、夫婦仲良く一緒に過ごしましょう」
「あぁ、そうだな」
私は、涼平から身体を離すと、お湯を沸かした。
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