麗しき青い鳥

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涼平とは、高校時代からの同級生だった。涼平は、大病院の院長の息子として生まれ、私は、地方銀行の頭取の娘として、この世に生を受けた。 生まれた時から、ピアノ、クラシックバレエ、書道、英会話、お茶、生花と、あらゆる女性の嗜みと教養を身につけることを義務付けられ、大切に育てられた。 動物は、本能で、より強く、賢い遺伝子を残すため、繁殖相手の匂いを嗅ぎ分けるというが、私と涼平もそうだと思う。 互いに会った時から、惹かれていた。今思えば、互いの人間性ではない。互いが置かれている環境と親のスペックにだったのだろう。 そして、二人の間に産まれてくる、良質な遺伝子を掛け合わせた子供の為に。 お互い大学卒業後、すぐに結婚して15年目、私達に子供はいない。それもその筈だ。 涼平は、精子の数が極端に少ない体質だった。それを、自分の親にも、私にも隠して結婚した。それだけならまだしも、子供が、出来ないのは、私のせいだと、自分の両親に話しているのだから、ほとほと呆れてしまう。 「涼平さん、この間の話なんだけど……」 花柄のエプロンを外すと、私は、涼平の真向かいの椅子に座った。 「あぁ、その話だけど、やっぱり、外に働きに出てもらうのは困るよ。僕に稼ぎが、ないみたいだしね、そもそも、僕が、いつ帰ってきてもいいように亜紀には、家に居てもらいたいんだ」 涼平が、卵焼きに箸を伸ばしながら、こちらを見ずに返事をする。 (嘘つきね……) 稼ぎ云々よりも、私に外で自由にさせる時間もお金も与えたく無いだけだ。 「分かったわ。知り合いに、インテリアデザイナーの仕事を手伝ってくれないかって言われたから。嫌な思いをさせてごめんなさい……」
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