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「ただいま」
明け方、一つ下の階から帰ってきた涼平が、ジャケットと鞄を、いつものように私に渡す。
「おかえりなさい、疲れたでしょう」
「あぁ、オペの後の夜勤は、疲れるよ」
オペが、本当かどうかなんてどうでもいい。仕事の後の、日向子とのセックスで疲れているんでしょ、と喉の奥から黒いモノが溢れそうになる。
「朝飯は、要らない。シャワー浴びるよ」
「分かったわ、お昼ご飯は、昨日作っておいた、カボチャグラタンなの。隠し味に生クリームを入れて置いたから。涼平さんに気に入って貰えるといいんだけど」
僅かに、涼平の切長の瞳が揺れる。
「……あぁ、有難う。楽しみだよ」
「良かった」
私は、口角を上げて、優しく微笑むと、ジャケットと鞄を涼平の部屋へと運んだ。
そして、気づかれないように、口元だけで、にんまりと笑う。
二日連続のカボチャグラタンだけでも、胃もたれがしそうなのに、前日に不倫相手のカボチャグラタンを食べ、今日は、妻のカボチャグラタンをたべるのだから、精神的にも、胸焼けしそうになるのは当然か。
「いっぱい召し上がれ」
私は、涼平のシャワーを浴びる音を聞きながら、私は青いインコに試しにソレを餌を入れた。
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