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裸で拘束されて部屋に放置されるという仕打ちは、〈いつか〉ではなくその話を聞いたその日の夜にもう実行された。ただし、慎司は香菜さんにはロープを使ったようだが、私には手錠だった。
その日の宿泊は小樽のホテル。夜、行為した直後、慎司は手際よく、全裸の私の右手首と左足首、また左手首と右足首をそれぞれ手錠でつなぎ、さらに三本目の手錠で右足首を大きなちゃぶ台の足につないだ。そして夜食に何か買ってくると言って部屋を出ていった。三十分ほどして戻ってきたと思ったら義父母だった。行為直後の、シャワーさえ浴びてない生々しい姿を義父母に見られるのは、この上ない屈辱だった。私は亀のように首をすくめてうずくまるしかなかった。
「あらあら、今度の嫁も前の嫁と同類の変態だったみたいね」
「まあ、夫婦の仲がいいのはいいことじゃないか」
二人はすぐに部屋を出ていったが、嘲笑し蔑むような視線を私に投げかけるのを忘れなかった。そのとき、私には分かった。かつて香菜さんが受けた私と同じ仕打ちは決して偶然なんかではなかった、と。
義父母は偶然現れたように装っていたが、三人は結託していたに違いない。そうした理由は言うまでもない。この家の嫁となった女を徹底的に辱めることによって、それからの長い同居生活における自分たちの絶対的優位を確立するためだ。
香菜さんは彼らの脅迫めいたやり方に屈したのだろうか? それは分からないが、結局彼女は娘を連れてこの家から出ていった。一括払いの慰謝料のみならず、毎月払いの養育費まで手に入れた上で。
でもそれは勝ち気で聡明な香菜さんだからできたこと。一人で生きる強さもなく、両親に勘当されて逃げ場も持たない私は、どんなにひどい扱いを受けても、この人たちとともに生きていくしかない。そもそもここからも逃げ出したら、私はなんのために両親や光留との尊い絆を失ったのか? 私の人生の意味が分からなくなってしまうのだから――
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