第六章 修羅の家

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 凛が生まれても一万円しか生活費を増額してもらえなかった。さすがに無理ですと必死に抗議する私を、姑は呆れたように突き放した。  「男の子を産んでほしかったのに女の子。まったく使えない嫁だよ。一万増額でも多いくらいだ。次にまた女だったら承知しないよ」  承知しないと言われてもどうすればいいのだろう? 二人目の妊娠を先延ばしすることしか思いつかない。慎司に相談しても、気にするなと全然本気で取り合ってもらえない。  避妊もしたりしなかったり。慎司のする避妊は決して避妊具を使わず、口や違う穴に出すだけだから、彼には避妊という意識はなく単にそうしたかっただけかもしれない。  だから凛が生まれた半年後にもう二人目を身ごもったが、当然の結果といえた。幸い、二人目は男の子。名前は竜也。また親子三人の立ち会い出産となり、赤ちゃんの名前も私の知らないあいだに勝手に決められていたが、それでもよかった。義父母待望の男の子ということで、生活費も四万増額で毎月計十五万円。生活にようやく少しはゆとりができたが、そのこともそれほど私の心には響かなかった。  子どもたちが成長すればきっと私の味方になり、夫や義父母と対抗できるようになる。そんな未来を夢見ていた。大間違いだった。一対三だった関係が一対五になっただけ。現実の未来はつらかったどの過去よりもさらに残酷だった。
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