第七章 十五年目の覚醒

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 浮気相手に満たしてもらっているからだろう。性欲のかたまりみたいだった夫が、毎日同じ部屋で寝泊まりしてるのに、一年以上私の肌に触れてこなかった。このまま長期のセックスレスに突入するのだろうかと思ったら、三日前突然私のベッドに入ってきて、荒々しく私を抱いてそして果てた。何より不思議だったのが私との行為で、そのとき初めて避妊具を用いたこと。  おかしいと思って慎司の就寝中、彼のスマホをチェックしてみた。十五年前、結婚したとき携帯電話を解約させられた。それから今までのあいだに世間ではガラケーからスマホに切り替わっていたけど、それは麻生家でも同じ。私は一度も自分のスマホを持ったことがないけど、同居する家族がみんな持っていて、彼らが操作するのをずっと見せられてきたから、使い方はだいたい分かる。  彼は私を馬鹿にしきっているから、ロックなどかけていない。私が自分のスマホを見るとは思ってないし、見られたところでお金も身寄りも度胸もない私にはどうせ何もできないと決めつけているのだ。  案の定、スマホは浮気の証拠の山だった。私との行為を動画で撮影しまくった慎司なら、きっと浮気相手にも同じことをするはずだという私の見立ては正しかった。ずいぶん若そうな女とさまざまな体位でつながるたくさんの動画がすぐに見つかった。  予想通りだったからそのことにはそれほど衝撃を受けなかった。でも浮気相手とのメッセージのやり取りを見た途端、スマホなんて見なければよかったと激しく後悔した。  しんじ 「今日のデート、ずっと楽しみにしてたのに(泣き顔のスタンプ)」  さき♪ 「ごめんね、急に彼と両家の親とで会食することになってね」  しんじ 「我慢できないから一年ぶりに嫁を抱くわ」  さき♪ 「えっ。奥さんとセックスしたらダメじゃん。沙紀だって課長に操を立てて、婚約者の童貞君に何度誘われても、結婚するまで清い関係でいましょって断ってるのに」  しんじ 「おれだってあんな色気のない、つまらない女もう抱きたくねえよ。でも自分でするよりはマシだからな」  さき♪ 「分かった。その代わり、奥さんとセックスしたら動画送って。一年ぶりに課長に抱かれて喜ぶ奥さんの間抜けな顔を見てみたい」  しんじ 「OK! それにしても沙紀は悪趣味だな。まあ、おれも人のことは言えないが」  以上が私との行為直前のやり取り。  行為直後のやり取りが次。
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