516人が本棚に入れています
本棚に追加
さき♪ 「奥さん、かわいいじゃん。体型も崩れてないし、三十五歳で子どもを二人も産んでるようには見えないよ」
しんじ 「二十五歳の沙紀と比べたら月とスッポンさ」
さき♪ 「〈慎司さん、愛してる!〉って奥さん何度も叫んでたね。奥さんが課長にレスられてたこの一年、課長は沙紀とやりまくりだったのに。さすがに罪悪感でちょっと胸が痛んだかな」
しんじ 「おれも罪悪感で胸が痛んだぜ。おれが愛してるのは沙紀だけだってのにな!(爆笑のスタンプ)」
さき♪ 「(爆笑のスタンプ)」
さき♪ 「でも奥さん必死だったよね。なんでもしますから捨てないで下さいって裸で土下座してたし。言っとくけど、沙紀はそんなこと絶対やらないからね!」
しんじ 「分かってるって。おれだって愛してる女にそんなみっともない真似させねえよ」
さき♪ 「奥さん、みじめすぎ! でもかわいそうだから季節に一回は抱いてあげて。ただ必ず避妊すること。課長がこれから避妊なしの子作りセックスしていい相手は沙紀だけなんだからね」
しんじ 「OK」
さき♪ 「ところで、沙紀の結婚祝いとしてほしいものがあるんだけど」
しんじ 「なんでも買ってやる。で、ほしいものって?」
さき♪ 「毛皮のコート。これから冬で寒くなるから」
しんじ 「ちなみにいくらくらいするの?」
さき♪ 「五十万くらい」
しんじ 「なんだ、その程度か。よし、じゃあそのコートに合ったバッグも買ってやる」
さき♪ 「うれしい! 課長、愛してる! 童貞君と結婚したあとも沙紀の一番はもちろん課長だからね。約束通り課長の子どもだって産んであげる!」
しんじ 「産むのはいいが、沙紀に子育てできるのか?」
さき♪ 「大丈夫。童貞君ママに全部任せちゃうから」
しんじ 「(爆笑のスタンプ)」
さき♪ 「(爆笑のスタンプ)」
慎司と結婚して十五年。私はいったい何を手に入れたのだろう? 家族みんなに馬鹿にされ、夫には不倫されて、愛してないからみっともないこともさせることができるなんて言われて、夫の不倫相手には夫との行為動画を見られて、かわいそうだから季節に一度は奥さんも抱いてあげてと同情されて……
私にはもったいぶって毎月二十万の生活費をくれるだけで、個人的には結婚指輪も含めて何も買ってもらった覚えなどないのに、愛人にはぽんと五十万の毛皮のコートか。その夜、いびきをかいてぐっすりと熟睡する夫の隣で私は声を押し殺してずっと泣いていた。
最初のコメントを投稿しよう!