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20 買い出し
天気予報が言うには、週末の天気は晴れらしい。つまり絶好のバーベキュー日和ということだ。
俺は予定どおり、社用車を借りてきたので、今日は良輔と榎井を連れて買い出しに行く事になる。明日のバーベキューで不足分があれば買い足しに出ねばならないので、漏れなく買わなければいけない。
二人を乗せてドラッグストアを周り、紙コップやごみ袋、酒類を購入した。次はメインとなる肉やヤキソバの材料を買いに行く。
「んー? 事故か?」
俺の声に、助手席の良輔も頷く。
「何かやけにつんでるな。迂回する?」
「そうだなぁ。そこの道で駅西の方に回るか」
ハンドルを切って、道を逸れる。同じような車が後に続いてきた。横目に先の道を見ると、警察車両のランプが見える。やはり事故だったようだ。
「やっぱ事故っぽいな。気を付けよ」
「だな」
ようやく渋滞を抜け、目的地である駅前のぺリアに到着する。複合商業施設のぺリアは、地下街に食料品売り場があるのだ。
「肉と野菜な。あとソバ」
「タレも要るな」
手分けして商品をかごに入れていく。榎井は自炊を全くしないのか、キャベツも白菜もほうれん草も区別がつかない重度の家事音痴なので、ハッキリ言って役に立たなかった。
「ナスは買う?」
「買おう。俺好きなんだよね。ナス」
良輔が持ってきたナスをかごに入れる。ナスは何しても美味いよな。
「渡瀬、高いブドウがある。買おう」
「アホか。欲しけりゃ自分で買え」
榎井はしぶしぶ、ブドウをもとに戻した。何をやってるんだアイツは。
しょんぼりしながら戻ってくる榎井に、思わず笑ってしまう。小学生か。
「渡瀬ってさ」
「ん?」
「押鴨とは付き合い長いの?」
カートを押しながら相づちを打つ。良輔は前方の方でもやしの日付を確認していた。
「いいや。お前らと一緒。入社してから」
「そうなんだ? てっきり」
「何だよ。ラブラブに見えたか?」
「まあ、そんなとこか」
おっと。マジか。気を付けないと。付き合ってるなんてバレたら、どうなることやら。社内恋愛は禁止ではないが、寮に恋人を連れてくるのは禁止されている。恋人に限らず、社外の人間全部だが。
まあ、グレーな位置なのは間違いないはずだ。
「俺もタイプ違うけど、お前らもタイプ違うよな」
「まあ」
良輔は中身は真っ当だが、外見はヤンキーみたいだし、榎井は見た目も中身もオタク。俺は俺で、またタイプが違う。ウェイ系みたいな?
「まあ、同期の縁ってヤツだな」
「違いない。お陰でボッチ回避してるわ」
榎井も俺たちとの付き合いを嫌がっていないようなので、良かったと思う。自由なヤツではあるが、情がないわけじゃない。腹を割って話せば面白いヤツ。こういう友人を得られたのは、結局はあの時、良輔が声を掛けてくれたからだろう。俺一人だったら、気取って一人で居続けた気がする。
「まあ、今度もう一人増えますけど」
「ウガガガガ、忘れてた……」
榎井は本当に天敵が入居してくるのを忘れていたらしく、唸り声を上げた。今度来る隠岐という男は、オタクが嫌いらしいので、榎井とは合わないのだろう。
「もやしこれだけあれば良いよな。どうかしたか?」
「いや、隠岐の歓迎会どこでやる?」
「ああ。外か、寮内で飲むかだよな」
「俺は行かない!」
「可哀想だろ。仲間外れにすんな」
それで榎井が抜けるのも面白くないし。是非とも仲良くなって貰いたいのだが、前途多難だ。
俺と良輔は榎井の態度に、目を合わせて肩を竦めた。
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