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知り合ってから二年半近くが経つのに、メールの遣り取りをした事がない。連絡先は登録してある。だから帰り道、電車の中でメールを送ってみた。
『明日、一緒に大学行こうぜ』
路線は違うけど、少し遠回りをすれば夏目のアパートの最寄駅経由で行ける。
返事が来ない、既読は付いてるのに。
穴が開きそうな程にスマホを見つめる。
ブッ! という振動音で、嬉しくて座っていた身体が少し浮いた。
『よぉ、久喜。うまくいった?』
小島かよ。
居酒屋を抜けて夏目を追いかけた俺の背中に『頑張れよー!』と声を掛けた奴。こんな時に送ってくんじゃねーよ。お前はマジで空気読めねぇな、とブツクサと文句を垂れて小島のメールは無視した。
何で返事寄越さないんだよ、何だかへこんでスタンションポールに両手でしがみついて項垂れていたら、近くのおばちゃんに「大丈夫?具合悪いの?」と声を掛けられた。いいおばちゃんだな。「あ、すみません大丈夫です」って答えて姿勢を戻したけど、やっぱり夏目からは返事が来なくて電車から降りた時、電話を掛けようか迷ってスマホの画面を見つめる。
夏目の携帯番号。
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