そうして …

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そうして …

まだ寝ている久喜を起こさない様に、そぅっと静かにベッドから出てトイレに行った。少し尻が痛いが幸せな気持ちでいっぱいだ。 用を足している時にふと気が付き、疑念を抱く。ベッドに戻ると久喜が起きたようで、幸せそうな顔を見せてくれた。 「夏目、起きてた?」 そんな問いにも答えずに抱いた疑念を晴らす為、布団を剥いで久喜の股間に目を遣り背を向けて丸まって『くの字』になっている片足を持ち上げる。 「何すんだよ、えっち」 と言いながらも嬉しそうな久喜。 陰嚢に毛が生えていない。しゃぶったり舐めたりしている時も、そういえば毛が邪魔にはならなかったな、そんな事を思い出して天井を見た。トイレでの自分の股間を思い出し、全く違う事に気付いた。 こんな所までハンサムで驚く。 自分のハンサムでない股間を確かめる為に、パンツを摘んで中を覗くと久喜が俺に襲いかかった。 「俺にも見せて」 久喜の様に綺麗でないから、反射的に手で隠した仕草が興奮させてしまったようで 「犯すぞ」 ニヤリと笑った。 「久喜、もうゴムが無い」 恥ずかしそうに俺が答えると、そんなにヤッたかと笑ってキスをした。 「あっ」と、随分前に買った残りがある事を思い出し、「あるぞ」とベッドの横のサイドチェストに手を伸ばすと久喜が狂った様に怒り出した。 「何言ってんだよ!お前が女とヤる為に買ったゴムなんか捨てろ!」 引き出しを全部開け、コンドームの箱を見つけると久喜は思い切り踏ん付けて、ゴミ箱に投げ捨てた。 「あ?この部屋に女は呼んだ事ないって言ってたよな?なんでゴムがここにあるんだよ」 顔が怖い、般若のようだ。 「呼んだ事はないぞ。ホテルに行く時や彼女の家に行く時に持参した」 質問されたから普通に答えたのに、久喜が激しく頭を掻きむしっている。 「もう言わないで、そんな話し」 珍しく可愛い声を出して俺を抱き締めた。 「久喜が訊いたんだろう」 「痛っ!」 久喜が俺の背中を小さく抓った。 それから何度も何度もキスをして、「好きだよ」「愛してる」と久喜が囁き、「俺も愛してる」と涙を浮かべて何度も応えた。 ✴︎✴︎✴︎ 「美容師?」 もう昼に近い食事の用意していると、突然久喜が話し始めた。 「ああ、大学に通いながらでも行ける美容師の専門学校があるんだ」 「美容師になるのか?」 「ん、やってみたいと思って」 恥ずかしそうに、それでも意欲的な顔で久喜はそう言った。
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