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呼び出し音が何回がして、出ないなと思い、切ろうとした時に声がした。
「く、く、久喜かっ?ど、どこで、ま、待ち、待ち合わせ、る、んだ?」
酷く吃る夏目の声に、俺は胸がキュッとなった。
「お前の駅のホームで待ってるよ。何時の電車?」
「あ、明日は、に、に、二限からだ、から、朝の9時、32分の、で、電車だ」
「うん、じゃあ、それに合わせて駅のホームで待ってるよ、何処で待てばいい?」
「で、では、五号車のあたり、で 」
話しているうちに落ち着いてきたのか、夏目の声が少し滑らかになってきた。
「五号車な、待ってるから、一緒に行こうな」
「… ああ、楽しみだ」
えっ!? 楽しみって言った?
もう、マジでやめてぇー可愛すぎるから。
電車に乗っていた時とは別人の様に浮かれた俺は、その夜、スキップをして帰った。
そうだ、俺、VIO脱毛に行こう。
急に思い立つ。
いや、前から気にはなっていたけど別に必要ねぇだろ、と女に困らない俺は思っていた。
でも、夏目に見苦しいアソコは見せたくない、キレイな俺を見せたい、そう思ってすかさずスマホで検索して、速攻予約を入れた。
翌朝、夏目の言う時間よりも、はるか前に駅のホームに着く。
「8時か… 」
楽しみ過ぎて張り切っちまった。あと一時間半、どうやって駅のホームで過ごそうかと思い悩む。
でもそんな一時間半なんて、これから先、夏目と何処に行こうか、どんな風に過ごそうかと考えるだけであっという間に過ぎた。
「く、久喜、お、おはよう」
はにかんだ様な小さな声が聞こえて、勢いよく俺は振り向いた。
「夏目っ!」
少し顔を紅潮させて、目を泳がせている夏目。ああ、何てお前はそんなに可愛いんだと思って抱き付きそうになる。
朝の通勤ラッシュも終えたこの時間、ホームに人は疎で、抱き付くどころか俺は夏目にキスをした。
腕を引き、頭の後ろを抱えて、夏目の唇を熱く塞いだ。
舌を挿れる。腕を引いた手を腰に回して、俺の身体にギュッと押し付け夏目の口内を弄った。上顎の歯列をなぞると、一瞬腰が砕けた様な夏目の腰を俺は支える。
支えられて俺の肩に掴まると、グイッと俺の身体を離すために押しやる夏目に、俺は怪訝に目を遣った。
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