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「いや、大丈夫。何でもない」
切ない笑顔になっちまった。
ん?と怪訝な表情で見る夏目の顔が綺麗過ぎて、また想像してしまう。
女をどんな風に抱いてたんだよ。
机に突っ伏した。
「やっぱり、具合悪いんだろう?帰るか?」
バッと夏目の顔を見て
「夏目、ハグして」
少し涙目で言うと、一瞬顔が引き攣るのが分かって落ち込んでまた顔を伏せた。
少しして、机に突っ伏す俺の上にふわりと心地よい温もりを感じる。覆い被さる夏目の優しい笑みを浮かべた顔がすぐ横にあった。
夏目、お前はどうしてこんなにも俺を翻弄するんだ。
顔の横にあった手を握ると、夏目もギュッと握り返してきた。
ブッ。
俺のスマホが振動して、顔を向けると明日の予定のお知らせ。
『脱毛 13時』
そうだっ!明日、脱毛だっ!
ガバっと身体を起こしたので夏目が驚いて俺を見た。
「ど、どうした?」
「な、何でもない」
スマホをサッと隠す。脱毛に行ってる事は夏目には内緒、恥ずかしいから。
でも、講義室でそこそこ学生がいるのに、夏目がハグしてくれた事がとんでもなく嬉しくて、途端にご機嫌になった俺。
机の下で手を繋ぐと、夏目の顔は真っ赤になって、それでも握った手の力を強くしてくれて俺は安心する。
「いつ来る?」
また夏目が訊いてきた。
何だよ、夏目も待ってたのかよ(とりあえず部屋に来る事な、アッチじゃなくてもな)言えよ、全然招待してくんないから何かあるのかと思ったじゃん。
明日はVIO脱毛だからな、性交は出来れば避けた方がいいみたいだし、万が一そんな流れになったら残念だから、って、夏目とヤるかもって万が一なのかよ、と思ってがっくりする。
「明後日、いい?」
「明日でもいいぞ。明日、久喜は授業無いんだろう?俺も授業午前だけだから午後から来ればいい」
嬉しそうに夏目が言う。明日は脱毛エステだから、とは言えない、言いたくない。
「明日、ちょっと予定があるんだ」
俺の返事に途端に悲しそうな顔をした夏目に焦る。てか、そんななのに、何でニヶ月以上も部屋に招待してくんなかったんだよ。
「何で今まで部屋に呼んでくんなかったの?」
「そ、それは… 」
夏目の顔が真っ赤になった。
えっ?
夏目の家に行く = ヤる
でいいのか!?
胸の鼓動が踊り出し、俺は一気に上機嫌になる。
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