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恋人になれると思ったのに…
午後の授業も終わって帰る前にスマホを確認、まだ夏目からは連絡が来ていない。
講座とやらはまだ続いてんだな、どっかで時間潰すか、と思いながらふと思う。
俺、ホントに就活どうしよ。
夏目と付き合うようになって安心した俺はまた、就活からは目を逸らして過ごしていた。
やりたい職業もこれと言ってない、コーヒー店の窓際のカウンター席に座って、アイスコーヒーを飲みながら街行く人達の流れをただ眺めていた。
『遅くなりそうだ』
夏目からそんなメールが届いた。いつも基本そんな感じのメールで夏目は素っ気無い。最初は物足りなかったけど、今はすっかり慣れてしまう。
『そうか、俺、明日は大学無いから明後日な』
明後日、そう明後日だ、待ちに待った時だ。明後日まで長いな、ここまで頑張ったんだから頑張れ俺、と自分を励ます。でも明日会えないのか、寂しい、と思って切ないけど、脱毛行くから仕方ない。
想いを伝えあってからは、会わない日は殆ど無かった。大学が無い日でも外で会っていたしセックスは出来ていなかったけど、夏目が傍にいるだけで満足してた。
夏目は平気なのかな?俺と会えなくても、ふとそんな事を思った。
ブッとスマホの振動音で画面を見る。
『じゃあ、また連絡する』
平気そうだな、夏目、そう思うと胸がチクリとした。
✴︎✴︎✴︎
脱毛三回目終了、ちょっとチクチクして痛い、大丈夫かな、明日。
自然とニンマリして頬が緩む。あ、ローション買っておくの忘れた、と思い出してコンビニへ買いに行こうとした時にメールが届いた。
『ごめん、明日予定が入った』
夏目から。
え゛ーーっ!!なんで!?
嘘だろ!?
『今、電話大丈夫か?』
メールなんてまどろっこしい!夏目の返事も待たずに電話を掛けた。
「もしもし… 」
「夏目?何?一日ダメなの?」
「た、ぶん… 」
何だよ、その曖昧な返事、イラッとした。
「たぶんって?分かんないのかよ」
「…… 」
「何の用だよ」
いいよな、訊いても、俺との約束が先だったんだから。
「き、昨日行った講座の続きが明日もあるんだ」
俺が怒っている事が分かったのか、夏目の声が少しおどおどしている様に聞こえた。
「ふうーーん。朝から夜までか」
「じゃないと思うけど… 」
「思うって何だよっ!」
「ご、ごめん… 」
夏目を溺愛している俺は付き合い始めてから、こんな風に怒鳴った事がない。そんな俺の声にすっかり夏目が怖がっているようで、そんな事にも苛立つ。
「いいよ!好きにしろっ!」
電話を切ってスマホをベッドに投げつけた。
くっそ!何だよ!
ベッドに思い切り伏せて飛び込み、枕に顔を埋める。
ばか、夏目のばか、何度もぶつぶつと呟いて、お前なんか… なんだよっ!
起き上がってスマホを拾うとメールが届いていた。
『本当にごめん』
無視した。
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