第四夜-3

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 谷口が利用していたアカウントのフォロー履歴からは第二の葉田のアカウントは見つからなかった。もう既に削除されているようだ。なので、第二の葉田の配信に来ていたリスナー仲間のアカウントから当たることになっていた。何人か目星はついていたが警戒されても厄介なので極力自然な形でコンタクトを取る為、彼らの誰かが配信を開始したタイミングでリスナーとして潜り込むという段取りだ。そして配信アプリに潜り込んで4日目の夜、その時は訪れた。  “アモン”というアカウントがライブ配信を開始した。谷口のリスナー仲間の男性で、熱心なファンではなかったものの第二の葉田の配信には必ず顔を出していた人物だ。  俺は手慣れた操作でアモンの配信に参加し、例によって初心者である事を伝えた。配信開始直後な事もあって、彼の配信参加者は俺一人だった。  「こんにちは、コータさん。珍しいね、男の配信に男が来るなんて」  そう、基本的には男性のライバーには女性リスナー、女性のライバーには男性リスナーが訪れる事が基本なのだ。これについては仕方ない。若干の怪しさはあるものの、目的を果たす為に話を進めるしかない。  『実は、人探しをしていて』  操作情報を漏らすわけにはいかないので、嘘ではない範囲で自身の目的を伝える。以前助けてもらった御礼を言えていない、という理由に設定しておいた。  「ああ、そうなんだ。協力できるかはわかんないけど、一応どんな人か教えてくれる?」  『半年ぐらい前まで配信をしていた女性で、Rinoっていうんですけど』  「あっ、Rinoか。そういや最近見かけないね。ってあれ、アカウント消えてるじゃん」  アモンは喋りながらスマートフォンを操作し、自分のフォロー欄を確認したようだ。この瞬間まで第二の葉田のアカウントが消えている事を把握していなかったらしい。これは空振りかもしれない。仕方なく枠を出ようとした時だった。  「辞めちゃったのかー、まだちゃんと話してなかったけど、俺あの子の同級生なんだよね」  思わぬ発言に指が止まる。  『そうだったんですか』  「あー、でも、向こうは気付いてないと思う。こっちは顔も名前も出してないし、俺の配信には来てくれた事なかったからね」  『じゃあ、何故同級生だと?』  「名前と声と、喋り方。まるっきり高校生の頃のままなんだよね。それだけなら他人の空似って事もあるだろうけど、昔酷い事されたって言っていた話もそのままだったからさ。まあ、そんなに仲良かったわけじゃないけど、ある意味有名な子だったから覚えてたんだよね」  その後も話を聞いたが、この配信以外での交流はなく連絡先も知らないという事だった。繋がりこそ薄かったものの他のリスナーよりも有益な情報を得られたことに満足しつつ、更に深まった謎に頭を抱えた。  第二の葉田は、間違いなく葉田の死後に現れた存在だ。つまり別人である事は揺るぎない事実である。だが、同級生が本人だと認識するほどに似た声と話し方だったという。手駒を集める目的の為に、ここまで寄せる必要がどこにあるのだろうか。また、それほどに似た人物がそう簡単に見つかるのだろうか。  そもそも何故、”第二の葉田”でなければならなかったのか。
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