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「先輩!」
振り返ると悟が慌てて捜査本部に乗り込んできた。
「どうした、何か見つかったか?」
嫌な予感はよく当たるものだ。
「3件目です。今度は両脚が……」
そこまで発言して、悟は口元を抑えながらトイレのある方向へ消えていった。
「わかっていた、という反応だな」
今度は宮園係長の声だ。
「ええ。身元は確認しなくとも、柳井で間違いないでしょう」
驚きは当然無い。むしろこれまで柳井をターゲットとしていない方が不自然だ。このタイミング……偶然だろうか。
発見現場は上野公園。不忍池の繁華街に面していない両性爬虫類館湧きの茂みに突き立てられていた。そして勿論招待状も同じ場所で発見された。例によって配信時間は本日21:00。タイムリミットはあと11時間。だが、前回のように録画の可能性もある。手遅れになる前に一刻も早く現場を特定しなければならない。
捜査は二つの方法に分けられた。一つは悟が発見した防犯カメラ映像の男。これまでの2件と同一犯による犯行であるならば、脚部と招待状の発見現場からそう遠くない場所に監禁されていると予想される。上野公園周辺の防犯カメラに照準を絞り、過去数日間の記録を隈なくチェックし位置を特定するといった手段だ。地道だが一番確実性が高い。
そしてもう一つは柳井の周辺からの情報収集。現在の職場や住居、近隣で通っている店、何でも良い、交友関係と目撃情報をかき集める。現場の特定に至る可能性は低いが、今は少しでも早く少しでも多くの情報が必要だ。
そして俺は、そのどちらの捜査にも加わらなかった。向かう先は決まっている。
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