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気休めでもよいではありませんか、と男は食い下がり「これでも腕には自信がありますよ」とリボンタイをすっと整えて、こちらを知的な黒い眼で見る。
なぜか、断るにも断れないような、まるで蛇に睨まれた蛙のように身体が強ばり、私は乾いた口からひゅうひゅうと情けない息を漏らす。
参りましょう、お茶ならご馳走しますから。
男はそっと私を手招き、よい喫茶店があるのですと付け加える。
羽織っていたモッズコートのポケットに突っ込んだままだったスマホを取り出し、ははあやはりと私は納得した。
誕生日でしたね、失礼いたしました。
カフェを探す広い背中に一礼し、私はそのあとをついていくことにした。
長身で、颯爽と雑踏を歩く男。
彼の名は……。
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