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ステータスへ新たに設定した【快眠】のおかげで、俺は初めて泊まる宿でもぐっすりと寝て起きた。
さて、今日からしばらくは屋台生活だな。
俺は前世で将棋のプロ棋士だったが、将棋の対局で楽しみと言えば勝つこともだが、将棋めしも楽しみだった。
16歳でプロ棋士になり、それから19歳で死ぬまでに200局は対局したし、対局のたびに将棋めしを食べたのだ。
まあ、将棋めしと言っても出前か弁当だったのだが。
カツカレー、とんかつ定食、とんかつ弁当、カツ丼、うな重、握り寿司。
麺類はあまり頼まなかったな。
やべえ。
カツカレーやとんかつ、うな重とか握り寿司、食べたくなってきた。
とは言っても、ここは異世界。日本とは違う。
似たような料理がないわけではないが、同じものはない。
俺のスキル【マジックハンド】で、日本の食材をお取り寄せできないのか?
左手に「日本の食材お取り寄せ」と書いてみた。
ステータスを確認すると、【異世界通販】が追記されている。
おお! やったぜ! これで将棋めしが食せるぞ。
詳細を読む。
ふむふむ。手に3万円分の通貨を持ってください? 異世界ネット通販用タブレットを転送します?
マジで?
異世界から日本のネット通販できるのか?
財布から3万カルを取り出す。
「おお!」
右手に持っていた3万カルが消えて、眼の前にタブレットが出現した。
「マジかよ。でも、Wi-Fiも電気もないぞ?」
とりあえず、電源を入れてみる。
タブレットのシステムが立ち上がり、画面に説明文が現れた。
ふむふむ。
俺がタブレットを持つだけで、俺の生体エネルギーから自動で充電できるのか。Wi-Fiは俺の身体をアンテナにする?
なるほど。いや、仕組みがさっぱり分からんし。
まあ、異世界転生やらマジックハンドとかも訳が分からんし、まあいいか。
続けて説明文を読む。
ふむふむ。100万点ちかくの商品をお取り寄せできるのか。
メニューを見ると、空母や戦闘機、戦車や自動小銃とかもある。
……俺に戦争をさせたいのか?
食品コーナーをタッチした。
「ほう。出前や弁当も頼めるのか」
鹿児島産黒豚とんかつ定食、1980円を頼んだ。
瞬時に眼の前に、とんかつ定食が現れた。
ホカホカと湯気もあがっている。
「ゴクリ。まさか、異世界でとんかつ定食が食べれるとは。いただきます」
もぐもぐ。
「う、美味い!」
俺は夢中でとんかつ定食を食べた。
「師匠」
「いやー、美味い」
「師匠」
「流石は1980円だな」
「師匠」
「あ?」
振り返ると、レイちゃんが。
「師匠、何してるんですか?」
「とんかつ定食、食ってる」
「弟子に無断で?」
「いや、すまん」
「酷いです! 呼んでくださいよ!」
「いや、電話番号とか知らんし」
「そりゃあそうですけど」
「レイちゃんも食べる?」
「食べたい!……けど」
「けど?」
「朝ごはん、食べてきました」
「それは残念だ」
「本当ですよ!」
「そんなに朝から怒るな」
「そんなの出来るなら、教えてくださいよ」
「そんなのって?」
「とんかつ定食を出せるとか」
「いや、俺もさっき分かったんだ。色々やってたら」
「本当に?」
「本当だって。嘘を言ってないか鑑定するか?」
「まあ、信じますけど」
「で、用事は」
「今日は市役所、休みです」
「なるほど」
「屋台、手伝います」
「それは助かる。ちょっと待っててくれ」
「はい」
俺は残りのとんかつ定食を食べる。
「師匠」
「ん?」
「そのタブレット、タブレットですよね?」
「そうだけど」
「師匠、どんだけチートなんですか」
「いや、俺もびっくりしてる」
「そのタブレットで注文できるとか?」
「イエス」
「ちょっと私も使っていいですか?」
「変なもの注文するなよ」
「しませんよ。送料とか怖いし」
「だよな」
本当だ。異世界通販の送料はどうなってんだ? かなりの高額かと思うけど。
払った金額は送料込みなのか? 送料は表示されてないし。
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