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1枚目の広島風お好み焼きが完成した。試食をしたから正確には2枚目なのだが。 さて、屋台広場の管理者を呼んでくるか。 初めて屋台で食べ物を売る時や、新商品の食べ物を売るときは、管理者のチェックが必要なのだ。 変な食べ物を売られて食中毒が起きたりすると、管理者の責任問題にもなるから。 「ほう、重ね焼き500カル」 「実食、お願いします」 「うむ」 管理者は広島風お好み焼きを手にすると、クンクンと匂いを嗅いだ。 「ふむ。毒物や傷んだものは使ってないようだな」 管理者は食べ物の匂いで、ある程度の食品検査ができるらしい。 「さて」 管理者は広島風お好み焼きを一口食べた。 「うおっ! 美味いぞ!」 管理者はバクバクと食べて完食した。 「100点!」 周りは「おおー!」「ついに100点が出たぞ!」「嘘だろ。新人だろ、あいつ」とか騒がしい。 どうやら、この屋台広場では100点評価は初めてらしいな。 続けて、関西風お好み焼きを出す。 それを実食する管理者。 「ふおー! これも100点!」 連続で100点評価だ。 管理者の100点評価が出たからか、俺の屋台前には行列ができた。 考えるな、俺。無になれ。無になってお好み焼きを焼くのだ。 何枚焼いただろうか、次を焼こうとしたら、ポン、と肩を叩かれた。 ん? 「師匠、終わりです」 「終わり?」 「昼の部の営業時間」 「あ、そうか。終わったのか」 「はい」 「いくら?」 「え?」 「売り上げ」 「分かりません」 「そうか」 「はい」 「数えるか」 「数えましょう」 レイちゃんと500カル銅貨を数える。 1000カル銀貨や1万カル銀貨とかもあったが、ほとんどが500カル銅貨だ。 全部で5万カルあった。 「100枚も売ったのか」 「売れましたね~」 「レイちゃんのおかげだ」 「いえいえ」 「材料、多めに買っていて良かったな」 「ですね。でも、夕方の部のぶんが無くなりました」 「買いに行くか」 「そうですね」 「お好み焼きの食材が無くなったついでに、夕方の部はラーメンにしようかと思う」 「あ、食べたいです」 「俺も」 夕方の部はラーメンにすることになった。 時間はあるから仕込みも間に合うはず。 市場で材料を買い込み、ラーメン用の調理器具もレンタルした。 ラーメンの麺のような物を作り、物質変換能力で本当のラーメンの麺にする。 チャーシューみたいな物を作り、物質変換能力で本物のチャーシューにする。 そんな感じで、全ての材料をラーメン用の食材へと作り替えた。もちろんスープも。 試食用のラーメンを作ってレイちゃんと半分ずつ食べた。 「美味しい〜!」 「美味い」 今度は呼びに行かなくても、管理者は屋台の前で待っていた。 「それは何かね?」 「ラーメン、です」 「ほう、ラーメンか」 「え? 知ってるんですか?」 「いや。知らん」 「はあ」 まあ、だろうな。 管理者にラーメンを出す。 実食する管理者。 「おおおっ! これも100点だ!」 またも行列ができた。 考えるな、俺。俺はこれからラーメンの鬼になる。 何杯のラーメンを作ったか。レイちゃんに肩を叩かれた。 「終わったのか?」 「終わりました」 「まあ、100杯分のスープが終わったもんな」 「そうですね」 「今日だけで10万カル稼いだな」 「やりましたね」 「レイちゃん、これ」 レイちゃんに3万カルを渡す。 「え? 多すぎます」 「初日ボーナスだ」 「ありがとうございます!」 「うん」 レイちゃんがいなかったら、俺だけでは出来なかったからな。 レイちゃんが来れない日、どうしよう。
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