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屋台営業デビュー1日目、10万カルの売上があった。利益は日本円にして7万円くらいだ。 税金として利益の1割を納めないといけないが、レイちゃんへのアルバイト代を払っても5万円は残る。 今回は初日ボーナスとして3万カルをレイちゃんに払ったけど。 しかし、毎日のように今日みたいに売れるとしたら、とても俺1人では営業できない。 レイちゃんは公務員だから、平日はアルバイトできないし。 今後の作戦を考えるために、明日は休みにしよう。 屋台に本日休業の札を置いて、管理者に税金を預けてお礼を言って帰る。 「師匠、今日はバカ売れでしたね」 「そうだな」 初日ボーナス3万カルをもらって、ホクホクしているレイちゃん。 「明日、休むのは残念です」 「今度からは1日1万カルだぞ」 「はい。市役所よりも良いです」 「へー」 「私、これなら市役所辞めて」 「いや、公務員は辞めないほうがいいだろ」 「そうですか?」 「俺がどうなるか分からんし」 「またまた。レベル99の魔法使いがどうなると?」 「病気でコロリとか」 「師匠、病気になるんですか?」 おい、俺も人間だぞ。病気になんてならないけども。 「いや、おそらくならない」 「ほら」 「しかし、人生は何があるか分からんし」 「それを言ったら、公務員も分かりませんよ」 「いやいや、公務員が何かあるのは国がなくなる時だろ」 「それこそ、レベル99の魔法使いに何かあるって、国がヤバい時では?」 「まあ、そうなるか」 「それに、私が手伝わないと困りますよね?」 「それなんだ」 「ふふん。やっぱり師匠には、私が側にいないとだめですね」 「いや、そんなことはないけどな」 「またまた、無理しちゃって。素直になってくださいよ」 「まあ、ぶっちゃけ、レイちゃんが一緒に仕事をしてくれたら助かるけど」 「じゃあ、決定ですね」 「でも、市役所はすぐに辞められないだろ」 「お試し研修中なので、大丈夫ですよ」 「お試し研修中?」 「はい。いきなり本採用したら、使い物にならないと困りますよね」 「それはそうだが、お試し研修中のスキル鑑定士に俺を鑑定させたのか?」 「そこは、ほら、何事も経験ですし」 「まあ、いいけど」 「それで師匠が元日本人だって分かったし。結果オーライです」 「まあ、そうだな」 「じゃあ、明日は市役所に行って公務員辞退の申請をしますね」 「明日は休みじゃないのか?」 「市役所は24時間年中無休でいろんな申請を受け付けてます」 「へー」 「受け付けるだけで、対応は時間内にしますけど」 「まあ、だろうな。しかし、急に市役所を辞めたら親は怒らないか?」 「使い物にならなくて、クビになっていたって言います」 「まあ、それなら納得せざるを得ないか」 「ほら、私ってすごく不器用だったので」 「なるほどな」 翌日、レイちゃんは市役所に公務員辞退を申請した。 今後のことについてレイちゃんと相談する。 「俺さ、屋台で寝泊まりしようかと思うんだが」 「屋台広場って、24時間営業ですよ。あんな騒がしいのに寝れます?」 「俺は【快眠】能力も持っている」 「あ、それ私も欲しいです」 「ちなみに【身体が常に清潔】能力、【快便】能力も持っている」 「あ! それ私も欲しいです」 「しようがないな。誰にも言うなよ」 「言いませんよ」 レイちゃんにも【快眠】【快便】【身体が常に清潔】の能力を付与してやった。 「やっぱり、快眠快便清潔は大切ですよね」 「まあ、そうだよな」 屋台のスペースで寝たら、宿代が浮くから助かるもんな。 「で、めぼしい人はいたか?」 「何の話です?」 「スキルがない人を鑑定してくれって言ったよな?」 「あ、忘れてました」 「代金の受け取りやお釣りを渡すときに、相手の手を触るだろ?」 「触ります」 「鑑定し放題だよな」 「ほんまや。もう、早く言ってくださいよ」 「いや、それくらい言わなくても気づくと思ったけど」 「気づかないんだな、これが」 まるで他人事みたいだな。 「まあ、明日から頼む」 「分かりました」 頼むぞ、本当に。
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