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宿泊していた宿を引き払い、少ないが手荷物を屋台へと運んだ。 今日からしばらくは、俺はここで寝泊まりする。 屋台広場は24時間年中無休なのだ。警備員や管理者は常駐しているし、悪いことをする奴も滅多にいないから、野宿より100倍は安心だ。 まあ、俺にはレベル99の悪い奴バリアがあるから、悪い奴もそうそうには俺に手が出せないはず。 とは言っても人目は気になるから、広い布を買ってきてテントみたいにしてみた。 屋台広場の真ん中には、市を守っている結界水晶とは別の結界水晶が置いてあり、その力で雨や風とかを防いでいる。 なので、屋台広場の中は年中適温で雨にも濡れないのだ。 結界水晶の仕組みを思いついた人は、本当に凄いと思う。 結界水晶が無かったら、猛獣はともかくモンスターが存在する世界で人類はどうなっていたやら。 こちらの世界のモンスターは、恐竜みたいなのやデカい昆虫みたいなのがいる。 その中で最強と呼ばれているのは、龍と竜だ。龍はモンスター系で竜は昆虫系。 龍はいわゆる西洋のドラゴン系で、竜はトンボ系だ。 どちらも飛ぶし、水中でも長時間行動できる。 過去には、かなり弱った龍や竜を倒した人間もいたらしいが、別に倒さなくても人間は生きていけるから、今は無理をして倒しに行くことは減っているらしい。 いつの世にも変わった人間はいるもので、「俺なら龍を倒せる」とか、俺って強いんだぜアピールをしたいのか知らないが、たまに龍や竜を倒しに行って帰ってこない奴がいるそうだ。 能ある鷹は爪を隠すって言葉を知らないのだろうな。 俺はレベル99だけど、自慢したいとか俺って強いんだぜアピールとか、そんなのしたいと思わないんだが。 龍や竜の剥製でも飾りたいのか? 龍や竜の剥製を飾りたい王族とかに、龍や竜の討伐をさせられるパターンかもしれないが。 俺も強い事がバレると、「お前、強いらしいな。我は龍と竜の剥製を所望する。意味は分かるな?」とか王族や貴族に言われそうで怖いぞ。 「恐れながら、それって無料奉仕ですか?」 「お前、我から金を取るのか? あん?」 「あ、いえ、滅相もございません」 「分かったら早く行け」 「……はい」 そんなのまっぴら御免被る。 まあ、そんなことは起こらないと思うが。 それよりも明日からの屋台だ。 明日は何を売ろう。 屋台広場は24時間営業で、朝の部、昼の部、夕方の部、夜の部、深夜の部と、各部最低でも2時間ずつの5部構成となっている。 各部、最低でも2時間は営業しないとペナルティーがあるのだ。 5部構成の全てで営業しないといけないことはなく、昼の部と夕方の部だけ営業する屋台が多い。 俺も昨日は昼の部と夕方の部だけにした。 しかし、俺もレイちゃんもまったく疲れない。 流石はレベル99の身体能力だな。 だから、明日からは5部構成の全てで営業することにした。 夜の部と深夜の部は、そんなに客がいないらしいから、俺一人で大丈夫だろうし。 「で、いいかな」 「え?」 「俺の説明、聞いてた?」 「……何を買おうか考えてました」 「何を?」 「ほら、私ってボーナス込みで年収500万円くらいですよね?」 「まあ、商売が順調なら」 「欲しかったバッグやアクセサリーとか、たくさん買えるな〜とか考えてました」 「取らぬ狸だな」 「え?」 「取らぬ狸の皮算用」 「私、あんまり狸は好きじゃないです」 「どうして?」 「昔話だと、何だか狡くてマヌケですよね」 「まあ、そうかも」 「私は賢くて可愛くて気配りもできる猫ちゃんかな~と思います」 「まあ、思うだけなら自由だよね」 「はい」 気配りができるなら、ちゃんと俺の説明を聞いてくれよ。
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