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レイちゃんと俺は、屋台スペースに設置したテントみたいな中で話している。
この2畳くらいのスペースが、これからしばらくは俺の住む場所なのだ。
「もう一度言うけど、明日からは朝の部から深夜の部まで、全ての部で売ろうと思うんだが」
「深夜手当、出ますか?」
「いやいや」
「出ないんですか?」
「いや、レイちゃんは夕方の部が終わったらお帰りだから」
「私もここで寝泊まりしますけど」
「いやいや」
それ、流石に無理だろ。
「キャンプみたいで楽しそうですね」
「あのな、レイちゃんの親が許さないだろ」
「家族が多いし、私一人いなくても気づかないと思うんですよね」
「いや、気づくだろ」
「そうですか?」
「うん」
気づかないと怖いわ。
「なら、毎月10万カルを仕送りするって言えば大丈夫です」
「本当に?」
「うちの親、ずっと子供たちに『お前たちが成人したら、毎月実家に給料の半分か10万カルを入れなさい』って言ってたので」
「それ、同居するからだろ」
「食い扶持が減って喜ぶと思います。それに、私は成人してるから、家を出るのを親も止めれませんよ」
「まあ、そうだけど」
「じゃあ、異世界通販で布団をお願いします。フカフカの」
「まあ、うん」
レイちゃんもここで寝泊まりするのか。流石に2畳では狭いな。少し広げるか。
いや、横や縦にはもうスペースは無い。
二階建てにするしかないか。
「レイちゃん、材料を買いに行くぞ」
「え? 今日は休みですよね?」
「これから二階建ての小屋を建てる」
「わっ! 何だか楽しそうです」
「だな」
少しだけワクワクしてきた。
大工の経験は無いが、床が抜けないようにだけ気をつければ大丈夫だろ。
ステータスに【大工】能力を追加した。
ついでにレイちゃんにも【大工】能力を付与した。
流石はレベル99の大工だ。あっという間に簡単な二階建ての小屋が建ってしまった。
管理者がやってきた。
「君たち、ここに住むのか?」
「はい」
「じゃあ、管理費が1日に5000カルになるけど」
「あ、分かりました」
まあ、安いもんだ。
「師匠」
「ん?」
「気にはなってたんですが、階段は?」
「要らないだろ」
「二階建てですけど」
俺は軽くジャンプして、二階へ上がった。
「ほら」
「なるほど」
階段が無いぶん、1階が広くなるしな。
「私が二階でいいですか?」
「もちろん」
レイちゃんが二階のほうが良いに決まっている。着替えとかあるもんな。
「そんなに寝なくても大丈夫な気もするけど、深夜は交代で仮眠するか」
「そうですね。深夜はお客さんも少ないし」
「うん」
「それで、売り物は何にするんですか?」
「朝の部は、おにぎりと卵焼き。それと、味噌汁」
「あ、いいですね〜」
「漬物も付けちゃう?」
「漬物だけに?」
「付けると漬けるを掛けてるね」
「朝食セット350カルくらい?」
「それくらいかな」
「昼の部は、お好み焼きですか?」
「昼だからな、がっつりとカツ丼とかカレーライスにしようかと」
「あ、いいですね」
「夕方の部がお好み焼きで、夜と深夜の部はラーメン」
「あ、夕方はお酒を出していいですから、お好み焼きは合いますね」
「そうなんだよ」
屋台広場では、夕方の部だけ酒類の提供が許可されているのだ。
「レイちゃん、1人でラーメンできる?」
「はい。スープと具材さえ用意していたら、麺を湯がくくらいですし。大丈夫ですよ」
「まあ、忙しそうなら起こしてくれ」
「はい」
24時間、屋台をやったら1日に20万カルくらい利益が出そうだな。
1年で5000万円くらい貯金できそうな気がする。
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