第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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カフェを出て、人目につかない場所を探す。 人気のない通路を見つけ、足を止めた。 「和家、さん」 「ん」 彼と向かい合って立つ。 背伸びをして手を伸ばしたら、彼は届きやすいように背を屈めてくれた。 首に手を回して抱きつき、その形のいい唇に自分の唇を重ねる。 これで最後。 もう二度と、彼には会えない。 そう思うと、なかなか離れられなかった。 顔を遠ざけながら、視線を絡めてじっと見つめ合う。 「……ありがとう、ございました」 「僕のほうこそありがとうだ」 ぎゅっと彼に抱き締められ、最後にその匂いを思いっきり吸い込んだ。 手持ちのエコノミーのチケットで帰るつもりだったが、和家さんがわざわざ同じ便のファーストクラスのチケットを取っていてくれていた。 「そのチケットだと、アイツの隣になるから嫌だろ」 「なにからなにまですみません」 ありがたく、その厚意を受ける。 「じゃあ、元気で」 「和家さんも」 ロビーで和家さんと別れた。 別れた彼との思い出は、和家さんが全部上書きしてくれた。 この素敵な思い出を胸に前を向いていけそうだ。 また会いたいけれど、もう会えないんだろうな……なんて思いながら、私はハワイをあとにした。
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