第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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「いや、顔を洗って完全に目が覚めたら……って可能性はないよね……」 我ながら往生際の悪い自分に自嘲し、洗面所へと向かう。 しかし通過しようとしたリビングで信じられないものを見て、足が止まった。 「おはよう」 私に気づいた彼が、読んでいた新聞から顔を上げる。 「お、おはようって、なんであなたがここに……!」 オートロックだから鍵はかかっているはず。 そして部屋の鍵は確かに昨晩、テーブルの上に置いて寝た。 なのにどうして昨日の彼がここにいるの!? 「なんでって、今日は観光に連れていってやると約束しただろ」 私は怒っているというのに彼は平然と、また新聞へ視線を戻した。 「ほら、顔を洗ってこい。 準備が済んだら朝食を食べに行こう」 「昨日も言いましたけど、私はあなたのお世話になる気はこれっぽっちもないですから」 「いいから顔を洗ってこい。 僕は君が起きるのを待ちくたびれて、腹が減っているんだ」 「それはなんか、すみません……」 つい謝ったが、これは私が詫びなければいけないのか? しかも彼の顔は新聞から上がらず、私のほうをちっとも見ない。 「あーもー、腹が減って死にそうだー」 わざとらしく言い、ようやく私の顔を見た彼は、右の口端だけをつり上げてニヤリと笑った。
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