第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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からかわれた、そう気づいて頬がカッと熱くなる。 「……意地悪ですね、あなたは」 「そうか?」 軽く言って今度は、彼は新聞を畳んだ。 「いいからほら、顔を洗って着替えてこい。 いつまで経ってもしないというのなら、僕がやってやるが?」 「けっこうです!」 本当に実行されそうで、とっとと洗面所に逃げ込む。 なんなんだろう、あの人。 ヤるのが目的ならまだ理解できるが、昨晩は私をおいてさっさと出ていった。 そして今日は朝から、朝食を食べに行こうと私を待っている。 「……ほんと、わかんない」 はぁーっと私の口から落ちていったため息は、どこまでも憂鬱だった。 着替えて寝室から出てきた私を見て、彼がひと言発する。 「地味だな」 それはぐさっとナイフになって私の胸に突き刺さった。 お洒落だと思って買った、シンプルなフレンチスリーブの黒ワンピース。 でも私が着たらいまいちになるのはなんでだろう? いつも、そう。 雑誌やマネキンを見ていいなと思っても、私が着ると野暮ったくなる。 「予定変更だ、朝食を取ったら服を買いに行こう」 「だから、私はあなたのお世話になる気はっ」 「これ」 にっこりと笑った彼の手には、パスポートが握られている。 「返してほしいのなら、僕に付き合おうか?」
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