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それにここは誰も知らない異国の地。
あの人を忘れるためにほんの少しだけでいいから――他の人に縋っても許されるだろうか。
「そうですね、人質……この場合、モノ質?取られちゃいましたし」
彼の手に私の手をのせる。
ここにいる間だけ。
彼に夢を見させてもらおう。
彼と一緒にホテルを出た。
今日も移動はリムジンだ。
……彼って、いったい何者なんだろう?
今日はオフなのかアロハシャツになっているが、それでも気品が溢れている。
ゆで玉子のようにつるんとした肌は髭が生えるかどうかも疑わしい。
柳の葉のように細く切れ長な目、少し高い鼻に整った唇。
昨日と違い黒縁眼鏡になっているが、それがいいアクセントになっている。
「ん?」
彼の首が僅かに傾き、じっと見ていた自分に気づいて、顔を逸らす。
……観光、ではないみたいだし、仕事?
なんの仕事なんだろう。
朝食……というよりもブランチに彼が連れてきてくれたのは、パンケーキのお店だった。
「遠慮はしなくていい。
好きなのを頼め」
「ありがとうございます」
渡されたメニューを開き、どれにするか決める。
店員を呼んで彼は注文をしてくれた。
「李依はここに何日いる予定なんだ?」
「え?」
つい、まじまじと彼の顔を見ていた。
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