第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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まだ私、彼に名乗っていないはず。 「なんで、名前」 「パスポートを見た」 ああ、そーですね……。 ちなみにまだパスポートと財布は返してもらえていない。 「だいたい、どうやって部屋に入ったんですか?」 「ん? ちょっとな」 なんて彼はウィンクしてみせたが……まさか、ピッキング? いや、あんな高級ホテルの鍵がそんなので開くほどちゃちなわけがないか。 「それで、李依は何日いるんだ?」 「ハワイに六日間滞在の予定だったので、……あと五日ですね」 「わかった」 彼は頷いているが、彼の予定はどうなんだろう。 帰りの飛行機の都合などあるはず。 「……えっと」 尋ねかけて、止まる。 そういえばまだ、名前も聞いていない。 「その。 ……あなたの、お名前は?」 「僕の、名前?」 不思議そうに彼が、眼鏡の下でぱちぱちと何度かまばたきをする。 「そうだった、まだ名乗ってなかったな」 くすくすとおかしそうに笑いながら彼は手を差し出してきた。 「僕は和家(わけ)。 和家悠将(ゆうすけ)だ。 よろしく、初見(はつみ)李依さん」 「短い間ですが、よろしくお願いします」 その手を笑って握り返した。 名前を聞いたところで、頼んだ料理が出てくる。 「食べようか」
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