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第二章 責任を取ってもらおうだなんて思っていません
帰国してしばらくは忙しく過ごした。
住んでいたマンションは退去日が迫っていたので、とりあえず安いマンスリーに転がり込む。
両親にハワイで彼と別れたと報告したら、あんたがぽやっとしているからでしょと呆れられ、会社でも同じように笑われた。
そんな現実に、ハワイでの日々は夢だったんじゃないかと思ったが、胸もとで揺れる三日月のペンダントが確かにあの日々はあったのだと証明してくれた。
和家さんを疑っていたわけではないが、カードの入った財布も人質に取れていたので不正利用の可能性も捨てきれなかったが、それもなかった。
本当に、あの人はなにが目的だったのかいまだにわからない。
ハワイ旅行から帰国し、ひと月ほどが過ぎた頃。
「……嘘」
便器に座ったままそれの結果を見て、一気に血の気が引いていく。
しかし何度確認しても、それ――妊娠検査薬には陽性の結果が出ていた。
「……どう、しよ」
月のものが予定通りこなくて、最初は精神ダメージ大きかったし、忙しかったから遅れているだけだと楽観視していた。
しかし、一週間が過ぎ、二週間が過ぎるとさすがに焦ってくる。
まさかと思いつつ買ってきてやった結果がこれだ。
「相手……和家さん、だよね……」
別れた彼とはハワイに行くひと月以上前からそういう行為はしていない。
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