第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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「わかった。 今は聞かないでおいてやるからとりあえずこい。 ここにひとりにしておくわけにもいかない」 はっきり言わない私に何事か感じ取ったのか、彼はそれ以上なにも聞かず、私の手を取った。 「……はい」 半ば引っ張られるように立ち上がる。 彼に連れられて歩き、近くに止めてあったリムジンに乗せられた。 「あの……」 「あんな状況だったとはいえ、異国の地で、素直に男についていって車に乗るだなんてバカなのか?」 呆れたように彼がため息をつく。 自分で連れてきておいてそんなことを言われても困るが、彼の言うとおりでもある。 「でも。 あなたは悪い人には見えないので……」 男性はかけている銀縁スクエア眼鏡のせいか、誠実そうに見えた。 「それにもし、あなたに騙されているんだとしたら、私にはとことん男を見る目がなかったってだけの話なので」 だから私は、あの人と心変わりが見抜けず、ハワイにまで来て別れて途方に暮れる羽目になっている。 しかしそれも、私の責任だ。 「そうか。 僕の他にも誰かに騙されたのか」 くつくつとおかしそうに笑う彼を、ただ黙って見ていた。 「それで、誰に騙されたんだ?」 ふっと笑顔を消した彼が、眼鏡の奥から真剣に私を見つめる。 その瞳は静かで、なにもかも話してしまいたくなった。
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