第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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「その。 ハワイに着いた途端に、離婚して」 「うん」 口は勝手に開き、今の境遇をしゃべっていく。 それから、彼は相槌を打つ以外は黙って話を聞いてくれた。 「でも、これでよかったんだと思うんです。 もし、あのまま結婚していたらきっと、彼は幸せになれなかっただろうし。 私以外に幸せにしてくれる人が見つかったんなら、その人と結婚したほうがいいに決まってます。 彼が幸せになってくれたら、それでいいです」 これは、私の心からの気持ちだ。 これで彼が幸せになれるのなら、私は黙って身を引こう。 彼を幸せにできるのが私じゃなかったのは淋しいけれど。 「それでそいつは幸せになって、君は誰が幸せにしてくれるんだ?」 「……え?」 彼が幸せならそれでいい。 それ以外、考えなかった。 私が誰かに幸せにしてもらう? 「君がそいつの幸せを願い、自分の幸せを考えないというのなら。 このハワイにいる間だけでも、俺が幸せにしてやろう」 彼がいったい、なにを言っているのかわからない。 戸惑っているうちに車は豪華なホテルの玄関に止まっていた。 「降りろ」 「あっ」 追い出されるように車を降ろされる。 「こい」 どんどん歩いていく彼を慌てて追う。 すれ違うホテルスタッフのほぼ全員が、彼に頭を下げた。
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