第一章 挙式予定のハワイまできて式目前で彼と別れました

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「今晩だけと言わず、ここにいる間ずっといればいい」 ふっと唇だけで彼は面白そうにふっと笑った。 「そういうわけにはいかないので」 「まだ断るのか。 いいねぇ。 さらに気に入った」 彼の美しい指先が私の顎を持ち上げ、視線を合わせさせる。 「僕は絶対に、君をものにしてみせる」 じっと私を見つめる瞳は、そのレンズがなければやけどしそうなほどに熱い。 なにが彼のそんなスイッチを押したのか考えるが、思い当たる節はなにもなかった。 「疲れているだろ? 今日はもうゆっくり休むといい。 明日は観光に連れていってやる」 ふっと笑った彼は、とても優しげに見えた。 おかげで心臓が、とくんと鼓動した。 「あの、だから」 彼が立ち上がり、スーツを整える。 「ああ、腹が減ってるよな。 ルームサービスでなんでも取るといい」 「それくらいは、自分でなんとかできます」 ドアに向かっていく彼を追う。 「だから、僕がこちらにいる間の費用、全部持つって言っているだろ」 「そこまでお世話になるわけには」 「ああもう、うるさいなっ」 いきなりぴたりと彼が足を止め、顔をぶつけそうになった。 くるりと振り返った彼が、私を見下ろす。 「まだガタガタ言うなら、そのうるさい唇塞いで、今度はベッドへ連れていくが?」
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