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桃田はいつの間にか屋上からいなくなっていた。
一琉との再会に気を取られていたみる香は彼女の事を思い出す。
桃田を探そうと急いで屋上を出ようとすると一琉に手を引かれ「大丈夫」と声をかけられた。
「だけど……桃ちゃんにお礼言いたい」
「桃田はね、こういう時決まってある場所で待機してるんだよ」
「え?」
一琉は面白そうに笑いながら屋上の扉に向かって彼女の名を呼ぶと扉の窓に突如人影が映し出される。どうやら隠れていたようだ。
「再会は終わったみたいね」
「桃ちゃん!!!」
みる香は屋上の扉から現れた桃田に駆け寄り抱きついた。
ありがとうと何度も言葉を告げ、桃田に気遣わせてしまった事を謝罪した。桃田は笑いながら気にしてないのだと本当に心配しないでくれとそう返してくれた。
「私ももう一度あなたと話せて嬉しいわ。みる香ちゃん、今後も仲良くしてくれる?」
「桃ちゃん……そんなの私の台詞なのに…これからも宜しくね!!」
そう言って互いに手を握り合っていると一琉は二人の繋いだ手を面白くなさそうに凝視し、桃田に向かってこんな言葉を投げ始める。
「みる香ちゃんは俺の大事な彼女だから、あんまり長く手を握らないでほしいな」
「あんた……バカ度が増したわね」
「いちる君……桃ちゃんの前で恥ずかしいこと言わないでよ」
「あははみる香ちゃん、さっきの俺たちのキス、ばっちり桃田に見られてるよ」
「ええ!!!? あ、それもそうか……」
「大丈夫よみる香ちゃん、こいつと違って弁えているから目は逸らしたわ」
そんな会話をして三人は笑い合った。
屋上の寒さはいつの間にか忘れ、三人で談笑をしながら時間を過ごす。
そして一琉と手を繋ぎながら自宅へと帰宅するその時間が、その全てが、堪らなく幸福感で満たされていることに気が付いた。
一琉は罰を受けるが、みる香との未来は決定された。
二人の恋は困難であるとしても、それを後悔することは決してない。
二人は互いがいるだけで幸せを感じることができるからだ。
一琉はみる香ただ一人だけを生涯一途に愛し、みる香は一琉だけを男と知る。二人の話はこれでおしまい。
――――――――これは、天使と人間の恋のお話。
end
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