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第十八話『望み』
紅茶巡りが終わってから初めて迎える月曜日、特に大きな変化はなかった。
告白をされたものの率直にお断りした久々原からは特に嫌な目線を向けられることも気まずそうに避けられることもなく、ただ目が合うと挨拶だけしてくれるそんな関係で収まっていた。
みる香は潔く諦めてくれた様子の久々原に多少の罪悪感はまだあれど、それ以上深く思い詰めることは無くなっていた。これはきっと桃田とバッド君のおかげだろう。
「テスト最終日はアイスでも食べに行こうよ〜」
休み時間になると檸檬は楽しそうな顔でみる香に誘いの言葉をかける。
みる香はそんな檸檬からの誘いに嬉しさを感じながら二つ返事で頷いてみせた。
テスト明けの楽しみが増え、テストのやる気も上がるものである。
どこのお店で食べようか檸檬と会話をしていると「みる香ちゃん」と呼ぶ声が少し遠くの方から聞こえてきた。声の主は桃田である。
「桃ちゃん!」
檸檬に元気よく送り出され、みる香は桃田の元へ駆け寄った。桃田はおはようといつものように凛々しくも優しい笑みを向けてくると早速みる香へ用件を伝えてきた。
「みる香ちゃん紅茶好きって聞いたからこれ、あげるわ」
そう言って差し出してきたのはみる香がいつも飲んでいる紅茶よりも少しお高めの紅茶だった。みる香は目を輝かせる。
「ええ!? いいの!? ありがとう〜」
みる香は心の底から舞い上がる嬉しさを素直に桃田へ向けるとそのまま彼女から紅茶を受け取った。
「次移動教室だからもう行くわ。またね」
桃田はそれだけ言うとそのままC組の教室を後にする。
みる香はそんな桃田の背中に「ありがとね!」ともう一度声を掛けてから自席へと戻った。
席へ戻るとそこには何故かバッド君が檸檬と会話をしていた。
「あ、みる香ちゃんおかえり」
「森村ちゃん、それ何?」
なぜバッド君がここにいるのかを尋ねる前に檸檬に質問されたみる香は彼女に指摘された紅茶を目の前に差し出してから口を開く。
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