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テストまで残り一週間となると全ての生徒は部活動が一時休部となり、放課後は図書室や教室で勉強をする生徒が増えていた。みる香もその一人であった。
図書室で待ち合わせをしていた星蘭子と莉唯の元へ檸檬と二人で向かうと二人はみる香達の席を確保してくれていたようで、四人で一つのテーブルを囲うようにして勉強ができるようになっていた。
静まった図書室では大きな声で会話ができなかったが、小声でお礼を述べると二人は天真爛漫な笑みを向けて大きくブイサインを作って見せてくる。
息が入ったりなその二人に癒されながらもみる香と檸檬は席へと座り、勉強を始めた。
中間テストのような結果にはならないよう今回のテストはみる香も気合を入れている。
そして何より、夏休みに補習には出たくない。せっかくの友達ができた初めての夏休みなのだ。補習などで青春を謳歌できないのはごめんである。
小一時間ほど集中し、トイレ休憩に行こうと一人廊下へ出るとみる香はバッド君の姿を見つけた。
彼は勉強をしているわけではなく、ただ一人の女子生徒と楽しそうに談笑をしている。
(なんか、久しぶりに見たな)
ここ最近はバッド君の女の子との噂が新たに流れることはなく、こうして女子生徒と親密そうに会話をする姿も最近こそ本当に見かけることがなかったのだが、久しぶりのこのシュチュエーションにみる香は妙な懐かしさを覚える。
しかしみる香の理解できなかった近い距離感は今回の場面にはなかった。二人は一定の距離感を保ち、ただ友人同士が談笑しているだけのようにも見える。
みる香は小さく息をつくとそのまま目的のトイレへ向かうことにする。彼が他の誰かと話をしているのならみる香が首を挟むのは野暮だろう。
そのままトイレに歩いて行くとみる香は勉強の内容に頭を切り替えていった。
「お疲れ〜! 明日も放課後図書室でね〜!」
「まったね〜!!」
ハイテンションな星蘭子と莉唯はそういって手を振ると反対方面の歩道へと足を向ける。
そのまま手を振り返し暗くなった道のりを檸檬と二人で歩いていると檸檬は疲れた〜と言いながら大きく伸びをしていた。
「ねえ森村ちゃん、夏休み海行かない!?」
「うみっ!?!?」
「そうそう、水着も買いに行こうよ」
檸檬の突然の提案にみる香は驚く。友達と水着を買いにショッピングして、海にも遊びに行く。なんて最高の夏休みだろう。
みる香は「行こう! 補習ならないように復習しなきゃ!!」と言って更にやる気を向上させた。
檸檬はみる香の返答にやった! と笑いながら二人で帰り道を歩いていく。
みる香はもうすぐくる夏休みに思いを馳せながら、自宅に戻ってからも勉強を続けた。
第十八話『望み』終
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