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バッド君から視線を逸らして自身の髪を耳にかける。身体だけは彼に向き合った状態で言葉を続けた。
「私、異性の友達は本当に要らないなって思ってたんだ」
「うん、知ってるよ。嘘じゃないこともみる香ちゃんを見てたら分かったよ」
みる香の言葉に悩む余地もなくすぐそう答えるバッド君はいつものような声色だ。
「う、ん……だからね、私バッド君ともただの契約者だと思ってこれまで関わってきたはずなんだけど…」
「あはは、みる香ちゃん改まってどうしたの? 大丈夫だよ、君は友達になりたい子とだけ友達になればいいんだよ」
バッド君は笑いながらそう言ってみる香を見てきた。
みる香が緊張しているせいか、言葉の意味が彼にはまだ伝わっていない。
どんな言い方をすればいいか悩んでいるとバッド君は何やらハッとした様子でそのまま言葉を続けてきた。
「あれ、もしかして友達になりたい男がいるの? 誰? まさか久々原とか言わないよね」
「違うよ……それが、バッド君なんだよ」
「え?」
みる香はそのままバッド君に顔を向けて真っ直ぐ彼の目を見据えた。
「私、バッド君の事ただの契約者とは思えなくて……友達に…なりたい。バッド君と友達になりたいって最近思うの!」
シン……と静まった歩道で時が流れる。
「え……俺と?」
僅かな沈黙が終わるとバッド君は呆気に取られたような顔で目をしばたたかせている。珍しい反応だった。
「…バッド君が私と友達になるメリットがないのは分かってるよ、ごめん、私が一方的に思ってるだけでいいんだ」
バッド君の反応を見て彼の気持ちを悟ったみる香はそのまま彼を置いて自宅の方へと歩き始める。バッド君と友達になる事はできな………
「待ってよみる香ちゃん」
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