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そんなみる香を前にバッド君は自身の首筋に手を当てがいながらこちらに向き合う形で言葉を発してきた。
「うーん、だけど今回のはデートじゃないよ?」
何とバッド君は前回とは正反対の言葉を放ってきた。みる香は思わず怪訝な目を向ける。
「男と女が出掛けるのはデートだって誰かさんが言ってたけど??」
そう言ってバッド君に詰め寄ると彼は困ったような笑みを向けて両手を見せてくる。
バッド君は「まあまあ落ち着いてよ」とみる香を宥めようとしてくるが、みる香の表情はムスッとしたままだ。
「確かに男と女が出掛けるのはデートだね。うん、撤回しないよ」
「じゃあ今回は無理だね」
「だけどさ、俺は君と遊びに出かけたいんだ。友達として」
「ん?」
「みる香ちゃんがデートって思うのは仕方ないけど……俺としてはただの友達として、君と遊びに出かけたいなって思うんだよね」
「むむ……」
「昨日俺と友達になりたいって言ってくれて嬉しかったんだけどなあ」
「…………」
「せっかく友達になったなら、交流を深めたいって思うのは当然のことだと思うんだけどなあ」
「………………」
「みる香ちゃん風に言わせてもらうと、とにかくデートじゃないっていう答えになるんだけどねえ」
その台詞は、以前久々原との紅茶巡りをデートだと言い張るバッド君に対してみる香が放った言葉を思い起こさせた。
こんな言葉まで出されてしまってはもう何も言う事はできない。
「…………っ、わ、分かった! デートじゃないなら! 行くから!」
完敗である。バッド君には敵いそうにない。
みる香はバッド君の誘いを受けると彼は途端に爽やかな笑みを向けて楽しそうにこちらを見た。彼の表情はいつになく涼しげだ。
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