第二十一話『夏休みの約束』

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第二十一話『夏休みの約束』

 夏休みが始まり、みる香は貴重な長期休みの楽しさを噛み締めていた。  檸檬とは水着を買いに大型ショッピングセンターへ足を運び、そのついでに映画やゲームセンター、ウィンドウショッピングを楽しんだ。  海は八月に行く予定で、その日の計画も練りながら一日を満喫した。  そして別日に星蘭子と莉唯からもお誘いを受けていたみる香と檸檬は星蘭子の自宅まで遊びに行き、一日中映画鑑賞やお喋りをして過ごした。  四人でするお喋りは話題が尽きず、ずっと笑いっぱなしであった。  みる香の夏休みは前の自分では考えられない程に順調で好調だった。 (ほんと、夢みたいだなあ)  そんな事を考えながら自宅のソファで仰向けに寝転がるみる香は天井を見つめながら明日のことを考える。明日はバッド君との約束の日だった。  夏休みに入ってすぐバッド君から日時決めの連絡がきていた。  どこに遊びに行くのか悩んでいたのだが、バッド君の無難な提案でみる香達は動物園に行くことが決まった。  動物にはそれなりに関心のあったみる香にとって動物園という場所は良案だった。  しかしうまく言いくるめられてはいたものの、バッド君と二人で出かけること自体には、未だ考えるところはある。  バッド君のことは友達だ。けれども、彼に対する自分の気持ちは全てが友達という気持ちで満たされているのかと問われると素直に頷けない。  決して後ろ向きな感情でないのは確かだが、友達だけではないこの感情が、今回の遊びを躊躇う原因になっているのは間違いなかった。 「でも行くって言ったし……」  そう独り言を言ってからみる香は立ち上がり、自分の部屋へと戻っていった。
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