第二十一話『夏休みの約束』

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 久しぶりの動物園はとてつもなく楽しかった。  人が多く、活気があるのも相まって園内の盛り上がりは想像以上だった。  みる香はバッド君と共に人気の動物は勿論、慣れ親しまれた動物や希少動物と言われている動物まで隅から隅へと園内を見て回った。  動物との触れ合いもあり、みる香はウサギや羊と戯れながらはしゃいでいるとバッド君も途中から参加し二人で笑い合うそんな時間を過ごす。  充実した時間を過ごしている中で、みる香は思考していた。  これが男女の友達というものなのだろうかと。バッド君といるから楽しいのだという感情はきっと、間違ってはいないだろう。 「いやあ〜ちょっと疲れたねえ」 「私も……でも楽しかったなあ」 「あはは、まだお昼だし休憩が終わったらまた見に行こうよ」  二人は正午になると園内に備えられた椅子に座りながら休息をとる。  みる香は両腕をテーブルに預けながら疲れを癒していた。 「お昼は食べたいものある? 買ってくるよ」  その言葉でみる香は瞬時にガタッと椅子から立ち上がった。 「ダメダメ! 私が出すから! 一緒に…いや、私が買ってくる!」  きっと彼が昼食を買いに行った暁には、また入場券のようにバッド君がお金を払うに違いない。そういう男なのだ。気持ちは嬉しいがみる香は平等が良い。  だから昼食くらいはみる香がお金を出そうと決めていた。  しかしバッド君は涼しげな顔をしていいよいいよと言ってくる。よくないのだ。  みる香は彼に昼食までも奢るつもりでいるのだろうと率直に指摘をすると、バッド君は笑いながらバレてたか〜と爽やかに笑う。  やはりみる香の予想通りだった。こちらとしては奢られる事を望んでいないのだと正直にバッド君へ訴えた。 「バッド君、私奢られるの嫌だよ。私は自分のお金で美味しいものが食べたいの!」 「みる香ちゃんも中々に頑固だよねえ、でも買いにはいかせてよ。お金はちゃんと君から受け取るから。これならいいでしょ?」 「……ていうか、私が昼食出すつもりだったんだけど…」  みる香は苦い顔をしながらそう告げるとバッド君は尚も笑いながらその提案を断ってきた。 「流石に女の子に全部出させるわけにはいかないよ。それにみる香ちゃんにはデザートを奢ってもらうしさ」 「それはバッド君が入場料出すって言うから……!」 「うん、だけどそれは俺が誘ったからだって言ったでしょ? 入場券の話はこれでおしまい。昼食は各自の分を自分で出す。これでいいよね?」  バッド君は一人でそう言い切ると「じゃあ買ってくるね〜」とみる香を置いて行ってしまう。完全にバッド君のペースである。 (まあいいか……買いに行ってくれるのは助かるし)  午前中にハメを外しすぎたせいか、みる香は疲労感に襲われていた。  どれだけ歩き回ったらこのような疲労感を迎えるのかという疑問には単にみる香が運動不足なだけであった。  バッド君がそんなみる香を気遣って一人で買いに出たのはこの状況からみる香でも理解できていた。
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