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その後、両手に料理を持ち戻ってきたバッド君と一緒に昼食を食べ終えると二人はお腹が満たされた状態で満足げに椅子に座って時間を過ごしていた。
「もう少ししたら行こうか」
「そうだね、でもあと少し座らせて……お腹いっぱいで…」
「あはは、いいよ。みる香ちゃんが動けそうになったら行こうよ」
そんな会話をしながらちょっとした雑談をバッド君とする。
夏休みの宿題はどの程度進んだのか、二学期も新たな友達作りをするかどうかなどといつもするような話をした。
バッド君といつからかこのような会話をするようになった事はみる香の中で嬉しい事だった。友達になった今では尚更だ。
そんな事を考えながら話を続けていると突然「半藤君?」という第三者の聞き慣れない声が二人の間に入ってきた。
みる香とバッド君は声の主を見上げる。
「やっぱり半藤君だ、動物園きてたんだあ〜」
「栗井さん、君も来てたんだねえ」
話しかけてきたのはどうやらみる香達と同じ学校の女の子のようだ。
みる香は栗井と呼ばれた彼女の顔に見覚えがなかったが、バッド君と栗井はそれなりに交流のある関係のようだった。
バッド君はいつものように爽やかな笑みを向けながら栗井に質問をする。
「友達と来てるの?」
すると栗井はチラリと後ろを振り返りながら「うん、あそこに七人いる」と答える。どうやらここから近い所で集まって昼食を摂っていたらしい。
みる香は目の前で話をするその二人の会話に入るわけでもなく、しかし心の中では彼女を羨ましいと思っていた。
(友達が七人……グループで遊びに行くのっていいなあ)
みる香も今年だけで多くの友達ができたのは確かだ。それも初めての友達である。
しかし、この目の前にいる栗井のように数多くの友達が存在する立ち位置というのは、どうしても羨まずにはいられなかった。
だからといってどうこうなるものでもないのだが、みる香は何も知らない彼女のことをただ、羨ましいとそう感じた。
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