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「あれーっ半藤だ!!!」
「え、ホントだ! ヤッホー! 半藤!」
「半藤君じゃーん!! 何してんの〜」
みる香はただただ目の前で会話するバッド君と栗井の様子をぼーっと眺めていたが、突如響き渡る数多の大きな声がみる香達、いやバッド君を囲うようにして現れた。
「栗井が戻ってこないからさーキョロキョロしてたら半藤がいてびっくり!!」
「も〜栗井ちゃん、半藤いるなら教えてよ〜」
「ごめんごめん、私も驚いて少し話してただけだよ」
そんな声が飛び交いながらみる香とバッド君を除いた計八人の女の子達がバッド君の周りで楽しそうに雑談を始める。
誰もがバッド君と栗井に話しかける中、みる香にだけは声をかけてこない。完全に蚊帳の外だ。
正直、居心地の悪さは否めなかった。
(でもしょうがないよね)
バッド君は人気者だ。それにみる香もこの輪の中に入ることは気が引けた。
理由は、この人気者であるバッド君と二人きりで出かけているみる香の事をよく思わない子は一人くらいいてもおかしくないと思ったからだ。
しかしずっとこのままここに空気のようにいるのは耐えられそうにない。
みる香はそっと座席を立つとこの場から離脱することを決意する。バッド君とは後で合流すればいい。
みる香は鞄を肩にかけ、バッド君にテレパシーを送る準備をする。
送信の準備ができたところで意識を集中させ、いつものようにテレパシーを送り始める。
『バッド君、先に……』
「ごめんね、俺たちこの後餌やりを見る約束してるんだ。そろそろ時間だからもう行くね」
(え?)
テレパシーを送ったとほぼ同時にバッド君は八人の女の子達にそう言い残すとみる香の腕を引きながら「いや〜餌やり楽しみだねえ」などと言ってみる香を見てくる。
白々しい台詞を言いながらいつもより早い足取りでみる香の腕を引っ張っていった。
みる香は言葉が見つからず困惑した様子でただただバッド君を見返していた。
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