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第二十二話『涙を拭う』
夏休みも中盤だ。休みはあっという間である。みる香は手付かずの宿題に取り掛かろうと思いつつ冷蔵庫のアイスを食べ始めた。
(宿題は明日からでも……)
そんな怠惰な考えを簡単に受け入れてしまいそうになる自身の心の弱さを跳ね除けるため、みる香はある人物に連絡をした。そう、檸檬である。
『森村ちゃんまだ手付かずなの!? そろそろやっといた方がいいよ〜今度一緒に宿題進める?』
みる香の予想通り、檸檬は既に宿題を進めていたようだ。部活も勉強もきちんと取り組む檸檬に電話をすれば、刺激を受けられると思ったみる香は彼女からの嬉しい提案に乗ることにする。
『わ〜そうしようよ! それならやる気も出そう!』
『じゃあ明後日とかどう?』
『空いてる空いてる!』
そんなやり取りをしてから小一時間ほど他愛もない話をして電話を切る。夏休みに友達と電話ができていることに喜びを噛み締めていると突然インターホンが鳴り出した。宅配だろうか。
すると一階にいる母から「みる香ー、お友達ー」という声が聞こえ、驚いたみる香は駆け足で玄関へと足を運んだ。
「桃ちゃん!!?」
そこには桃田がいた。みる香は驚きと嬉しさで思わず桃田に上がってと声を発していた。遊びに来た訳ではないかもしれないのにと内心反省していると桃田は「ありがとう、それじゃあお邪魔するわね」と悩むことなくみる香の家の中へ上がってくれる。
みる香はホッと胸を撫で下ろしながら桃田の後に続き中へと入っていった。
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